リーグとACLの並行を可能にする『2チーム分の戦力』の証明
【AFCチャンピオンズリーグGL第4節】
サンフレッチェ広島2-0ブリーラム・ユナイテッド
〔得点者〕
<サンフレッチェ広島>宮吉(45分)、柴崎(88分)
公式戦3連勝も、厳しい台所事情
開幕から公式戦5試合未勝利だった昨季のJリーグ王者・サンフレッチェ広島。しかし、シーズン開幕からの8連戦を大勝による2連勝により、明治安田生命J1リーグとAFCチャンピオンズリーグ初勝利を挙げて、国際Aマッチウィークによる中断を迎えていた。
ただ、中断期間には、リオ五輪代表候補のMF野津田岳人がアルビレックス新潟へレンタル移籍する事が発表され、今季定位置を確保していたDF佐々木翔が大宮アルディージャ戦の終盤に悪質なタックルを受けて長期離脱となる大怪我。さらに連勝した2試合で3得点を挙げていたU23日本代表FW浅野拓磨までもが負傷離脱。一気に主力3人が離脱した広島だったが、中盤明け初戦となったJ1第1ステージ第5節・ベガルタ戦でも新加入FWピーター・ウタカの2得点と3年目のMF茶島雄介がプロ初得点を挙げて、3-0と攻守で圧倒。今季J1リーグで初の完封も記録した。
公式戦3連勝を飾った広島はこの日、エースFW佐藤寿人と新加入FW宮吉拓実が先発。佐藤は公式戦3連勝の何れの試合にも出場できていない中、3年ぶりのACLアウェイ戦出場を決意し、チームにフィットしつつある宮吉と共に、攻撃陣の新たな組み合わせに注目が集まってスタートした。
【マッチレポート】ピッチ内外で柔軟に対応して公式戦4連勝
試合前には34度を記録した灼熱のタイでのアウェイ戦。現在の広島県内の平均気温が15度である事やアウェイ戦を考慮すると、ペース配分が重要なテーマとなるため、慎重に試合を運ぶ事を選択した広島。
ただ、守備ブロックを敷いて裏のスペースを封鎖する事を優先した試合の入りだったが、広島は、カウンターで仕留められるタレントがいない。そのため、マイボール時は丁寧に最終ラインからビルドアップするスタイルを貫いた上で試合を運んだ。実際に相手に押し込まれる時間帯もあったが、相手にシュートを許す機会が少なかったのは、そのためだろう。いざ攻撃する際にはDFの選手も積極的に攻撃参加し、塩谷司は自らのシュートなどフィニッシュにも多く絡んだ。
そして前半終了間際の45分だった。中盤でボールを動かし、DF水本裕貴が最前線のFW佐藤の足下へ鋭い縦パスを入れる。ボールを収めた佐藤は自らが引いて作ったエリア内のスペースへ走り込んだシャドー起用の宮吉へ絶妙なスルーパスを通す。エースのお膳立てを受けた宮吉は、やや角度が厳しいながも落ち着いてGKとの1対1を制して流し込み、広島が先制に成功した。
1点リードで前半を折り返したが、後半開始からは勝たないとグループリーグ敗退が決まるブリーラム・ユナイテッドが猛攻。リードを守る意識も働いた広島も浮足だった部分もあった。57分にはシュートをブロックしたボールがエリア内でフリーの相手選手に渡って絶体絶命の危機もあったが、シュートミスで助けられる場面もあった。
ただ、試合中で出た課題は試合中にピッチ内外が対応できていた。寄せが甘く、バイタルエリアでボールホルダーに前を向かせてしまっていたが、それは1トップに動き出しに長け、ポストプレーでボールを収められるFW皆川佑介の投入で高い位置にポイントを作ってラインの押し上げで対応した。その上でシャドーには先制点の宮吉のようなFWタイプに替えて、MF柴崎晃誠を投入し、より主体的にボールを動かしながら試合を運んだ。