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タイトル獲得失敗のガンバ大阪に必要な「ブーツ・ルーム」の伝統と意識

現在のガンバ大阪は”超攻撃”ではなく”堅守賢攻”

 その西野監督が2011年シーズンを最後に契約満了で退任後、2012年も最多得点を記録しながらもJ2降格の憂き目を経験したガンバ大阪。クラブ史上初のJ2での戦いとなった2013年シーズンから現在の長谷川健太監督が就任し、就任会見から「3点取らないと勝てない」を理由に、攻撃マインドに満ちたガンバに組織的な守備ブロックの導入を施し、2013年はJ2リーグを優勝。2014年にはJ1昇格初年度にしてJ1リーグ優勝。そして、それだけでなく史上初の昇格初年度での3冠を達成しました。

 ただ、本当に「3点取らないと勝てない」のか?J2へ降格した2012年シーズンはリーグ戦で3点以上取った試合では9試合全てで勝利しましたが、逆に3得点以上奪って負けるような打ち合いは1度もありませんでした。「3点取らないと勝てない」のではなく、「3点取れない」のが実情だったはずなのです。

 しかし、長谷川監督が就任してからは4バックをぺナルティエリアの幅でポジションを取らせ、クロスを上げる選手にはサイドMFのプレスバックで対応させる守備ブロックを優先し、攻撃は宇佐美貴史とパトリックのキープ力に依存する形が多いため、常に攻撃に人数が足りていません。バイタルエリアで人数をかけるパスワークが始まるのは高い位置からのスローインやセットプレー時などで人数をかけやすい時の限定。確かにサイド攻撃やカウンターとバリエーションが拡がったとも言えますが、現在のガンバ大阪のスタイルを一言で挙げると、今季のベガルタ仙台が提唱している“堅守賢攻”という言葉がしっくり来ると言えるでしょう。引いた守備の安定が最優先で成り立つ戦いです。

 ボールを奪ってからの速攻を重視しているからこそ、ボランチに定着した今野泰幸のボール奪取力が活きていたり、宇佐美貴史とパトリックの個人技も活かしやすいようなメカニズムになっています。ただ、それだけではマニュアルを守る“アルバイトの仕事”でしかありません。

 阿部や今野がノールックで前線右サイドのスペースへ走り込むパトリックに好パスを配給するシーンが多いですが、あれは“判断”ではなく、“マニュアル”。その辺りをヴァヒド・ハリルホジッチ日本代表監督に見透かされ、今野は代表から外され、阿部もガンバの2列目では最優先される選手でありながら代表に招集されない立場になっているように感じます。この自ら考えられるチカラがある倉田はそれがために代表にも招集されていると感じられ、代表の常連となりつつある右サイドバックの米倉恒貴とこの倉田だけがアタッキングサード内での横パスの最中に“3人目の動き”で飛び出していく動きが出せているのもハリルホジッチは見抜いていると感じます。

“黄金の中盤”や、山口・宮本・シジレクイといった選手達はもっとピッチ上で工夫していたはず。その差が、下記のような見るに耐えない圧倒される試合の多さに繋がっているように感じます。複雑なのは昨年も含めて相手チームに圧倒された試合でも結果的に試合には勝ってしまう事が多くあったこと。それが先日のナビスコ杯決勝でも前半で鹿島に幾度も決定機を与えて何もできなくても、ハーフタイムには「前半をゼロで抑えたから勝てる」というよく分からない意識がついてしまっていると考えられます。あの試合の前半を終えて、「勝てる」と思えるのはまさに押し込まれる事に慣れ過ぎてしまっていることで、昨年も3冠を達成した割には、GKの東口順昭がMVP候補だと言われるのは、それだけ相手に攻め込まれる事が多かった証拠。

 かつてはマンチェスター・ユナイテッド相手に20本以上のシュートを浴びせていたガンバ大阪はサッカーファンではない人達をも魅了していました。今のガンバ大阪は3冠獲得という結果でJリーグファンを魅了したかもしれませんが、海外サッカーのファンや、普段はサッカーなど観ない人々へは心を打つモノが少ないのではないでしょうか?いつまで経っても試合内容が語り継がれるような試合もなく、負けても「あの試合は良かった」という試合もなくなりました。そんな複雑な想いを感じるガンバ大阪のサポーターは多いのではないでしょうか?

残念なスタイル変更~攻撃型から守備型への移行は容易も、その逆は・・・

 2010年の南アフリカW杯での日本代表がベスト16進出、2014年のブラジルW杯でのオランダ代表が3位などの大変貌からの躍進ぶりから見ても、攻撃型のチームが守備型に移行するのは容易であると言えます。

 しかし、その逆は?となると・・・・。現在のチェルシーが低迷しているのもオーナーからの攻撃型のチームへの転換というオーダーがあったのも見えていますし、Jリーグでも堅守で鳴らすチームが色気を見せてポゼッションサッカーを導入すると低迷どころか下部リーグへの降格に至る事も多く、守備型から攻撃型への移行は非常に難しく、成功するとしても長い時間がかかります。

 西野監督が根付かせた攻撃スタイルを捨てたガンバ大阪はタイトルを獲れるチームになったかもしれませんが、失ったモノも相当に大きく、ここ最近のタイトルマッチ級の重要な試合での無得点負けに象徴されているような気がしました。