図にもあるように、縦パスに角度が無い。しかもその縦パスに周囲が連動していないため、香川は再び最終ラインに戻すしかない。このやり取りが非常に多いのだ。ドルトムントの前線に縦パスが入るとき、そのほとんどの場面で彼らはゴールに背を向けた状態でボールを受けている。
しかもフォローが無いので、1人1人のボールを持つ時間が長い。攻撃にテンポが生まれないのであれば、守備を固めた相手を崩すのは難しい。さらにこの現象は、失点数の増加にも影響を及ぼしている。
ドルトムントの最終ラインと前線に距離があるため、強引に縦パスを入れると相手にカットされる確率が高い。そうなった時、ドルトムントはCBとボランチしか残っていない状況となり、相手にカウンターを仕掛けられてしまうのだ。
こうした自滅を繰り返す事で、ドルトムントは失点数を増やしてきた。これは私が観戦した試合でも何度か見られた光景だ。
ドルトムントは2月14日のマインツ戦(4−2)、21日のシュッツトガルト戦(3−2)と多くの得点を挙げて勝利しているが、この得点シーンにも今のドルトムントを象徴するものがあった。マインツ戦での2点目となったロイスのゴールシーンだ。
この場面、ドルトムントはCBのパパスタソプーロスがドリブルで持ち上がり、そこからカンプルに出した縦パスでチャンスを作っている。流れるようなパスワークではあったが、注目すべきはパパスタソプーロスの攻め上がりだ。
先ほども書いたように、現在のドルトムントはDFラインと前線の距離が開いてしまっている。そのため、細かなパスワークを組み立てるにはどちらかが近づいてやる必要がある。このシーンではパパスタソプーロスがドリブルを駆使して距離を縮めたのだ。
しかしCBが毎回ドリブルで持ち上がるリスキーなプレーをする訳にもいかない。この得点は1度の攻め上がりが功を奏したラッキーなパターンと考えるべきだろう。
こうした遅攻を苦手とする現象はユヴェントス戦でも表れていた。相手DFのミスで1点を奪ったものの、その後シュートチャンスはほとんど訪れていない。ユヴェントスもイタリア仕込の固い守備をベースとするチームとあって、ドルトムントには崩す術が無かったのだ。
しかし遅攻を苦手としているのはクロップが就任してから続いている現象のはず。では、なぜ今季はこれほどまでに苦しんでいるのか。残る2つの理由を後編で取り上げよう。