イギリスに新スタイルを根付かせたチリ人指揮官:マヌエル・ペジェグリーニ
日本サッカー協会が監督として狙っていたと噂された事もあるチリ人指揮官のマヌエル・ペジェグリーニは、オイルマネーで強くなったシティを率いて1年半。
クロップに比べるとまだまだ在籍期間が短く、チームはこれから強くなるようにも感じる。
しかし、シティは明らかに昨季より弱くなっている。負傷者の続出も理由の1つだが、昨季はシルバ、ナスリ、アグエロで組む2列目が驚異的な破壊力を見せた。
フィジカル志向の強かったイギリスサッカーにおいて、彼らのテクニック溢れるパスワークに付いてこれるチームはほとんどいなかった。
それをチーム力として機能させたのはペジェグリーニ本人であり、プレミアリーグにポゼッションサッカーを植え付けた張本人と言っても過言ではない。
しかし今季はシルバやナスリにケガが絶えず、2列目の質が落ちている。現在はフィジカルの強い典型的なイギリス人プレーヤーのジェームズ・ミルナーや縦へのドリブル突破が魅力のヘスス・ナバスが2列目に入っており、昨季のような流れるパスワークは実践できていない。
ここから見えてくるのは、シルバ、ナスリ、アグエロの3名が揃わないと攻撃を構築できない脆弱性である。このパターン以外にペジェグリーニが別プランを用意できていれば良かったが、今のところそれは見られない。
今季はボランチの位置からチームを支えるヤヤ・トゥーレが不調で、凡庸な攻撃に終始している。ヤヤ・トゥーレもW杯での敗北以降モチベーションが落ちているようにも感じられる。
チームもアストン・ビラやストークといった格下に足元をすくわれる試合が多く、首位チェルシーとはすでに勝ち点6差を付けられている。これをマンネリ化と呼んでいいのかは分からないが、ペジェグリーニがチームにフレッシュな風を送り込めていないのは 事実だ。
今季は新加入選手も少なく、まさに昨季と同じままの布陣だ。選手たちが飽きていてもおかしくない。
短期政権を信条とするモウリーニョは、「チームは2年目に強くなる。1年目は準備段階、2年目は成熟した状態でシーズンインを迎えられる」と語っているだけに、2年目で躓いているペジェグリーニには疑問の声もある。
3年目のジンクスに挑む青年監督
フィオレンティーナを率いるモンテッラは、40歳の若さで監督として高い評価を受ける人物だ。
ローマ、カターニア、そしてフィオレンティーナで実績を残し、今季は2012年から指揮を執るフィオレンティーナでの3年目のシーズンとなる。
ほとんど負傷しているが、チームにはジュゼッペ・ロッシ やマリオ・ゴメスなど優秀な選手も揃う。モンテッラもイタリアでブレイクした3バックを優先的に取り入れ、就任1年目にはチームを4位へと躍進させた。
それが今季は3勝4分3敗で10位と今ひとつ波に乗り切ることが出来ていない。前節もサンプドリアに1-3で敗れ、早くも優勝戦線からは脱落してしまった。
モンテッラも3年目のジンクスの真っ最中であり、監督として難しい時期を過ごしている。モウリーニョがレアル時代の3年目にチームが内部分裂したように、3年目は監督にとって鬼門の年なのだ。
選手層に大きな変化はないが、昨季からの継続という単純なやり方に選手のモチベーションが上がり切っていない。ここが監督には戦術眼&モチベーターの両面の素質が必要といわれるゆえんだ。
長期政権を築くには両面を高いレベルで維持しておく必要がある。特にビッグクラブであればなおさらだ。
まとめ~監督業の壁を破れるか~
戦術のマンネリ、今一つ上がらないモチベーション。これは監督生活に最も大きく響いてくる。常に同じ戦術では選手に飽きが出てくるし、選手のモチベーションを上げる作業も一筋縄ではいかない。
ファーガソンは戦術家として高いレベルには無かったが、そのぶん選手を叱咤激励する孤高のモチベーターだった。ユナイテッドはファーガソンに口ごたえする者はいないというほど統率された組織になっていたのだ。