一方のチェルシーはアウェイでは負けなしで、ホームではグループ最大のライバルであったシャルケと引き分けた以外は全勝だ。最終節を前にしてで突破が確実となっており、リラックスした気持ちで1位通過を決める事が出来た(こちらはパリを引いてしまったが・・・)
決勝トーナメント1回戦1stレグでもホームで1−3と相手に3点ものアウェイゴールを献上して負けたアーセナルに対し、チェルシーは敵地で1−1と無難に事を進めている。アーセナルは1stレグの時点で負けが確実となるような試合運びをしてしまい、チェルシーは準々決勝進出を7割方決めた状態で2ndレグを戦う事が出来た。
CLでも敵地での戦いが非常に重要なものとなり、普段の国内リーグからアウェイで負けないサッカーを続けていく事が必要なのだ。その点モウリーニョ率いるチェルシーはアウェイでの戦い方が肌に染み付いており、CLなどの大舞台では守備に比重を置いて戦っている。隙あらばアウェイゴールを奪ってやろうというスタンスだ。
アーセナルはホームでもアウェイでも戦い方は一辺倒で、相手が自分たちよりも優れている場合に対処法を持っていない。国内リーグにおけるアウェイゲームはCLを制するための練習としても非常に重要な意味を持つのだ。
☆チェルシーと真逆の戦いが出来るのはバルサだけ
しかしチェルシーは1回戦でパリに敗れてしまった。ベスト16敗退はアーセナルと同じであり、チェルシーの戦い方が全面的に正しかったと胸を張って言うのは難しい。しかし、チェルシーの敗北はサッカーというスポーツの真理を具体的に表してくれた。
チェルシーの守備は盤石だったが、守り切る戦いでは時に事故が起こる可能性もある。事故とはパリに決められたCKによる2点を指し、何らかのミスで相手にゴールを献上してしまう場合もあるのだ。サッカーで相手にボールを保持させるという事は、それなりのリスクを抱える行為なのだ。
こうしたリスクを無くすには、バルセロナのように攻撃で相手を圧倒するのがベストだ。仮にアウェイゴールを奪われたとしても、バルセロナほどの攻撃力があれば2試合の合計点で充分に勝つことが出来る。失点を恐れる必要が無いほどの攻撃力が彼らにはあるのだ。
しかし今のサッカー界で、いかなる相手をもねじ伏せる攻撃力を有しているのはバルセロナくらいのものだ。つまり常に攻撃的に戦えるのは彼らだけという事になる。アーセナルやマンCといったチームがホーム・アウェイ関係なく攻撃的に振る舞うのは賢い選択とは思えない。
モウリーニョはそれを理解しており、彼は如何なる相手にもリスペクトを忘れない。スタンスは消極的でも、そこには必ず勝利を手繰り寄せるという勝利至上主義が存在するのだ。攻撃的に振る舞えるのは王者のみ、そしてCLの世界ではバルセロナだけという真理をモウリーニョは体現している。
確かに見る者は面白くないかもしれない。しかしチェルシーのように堅く戦うのが最も利口で現実的だ。少なくともチェルシーがベスト8でバルセロナと対戦していれば、もっと僅差のゲームを演じた事だろう。結果はベスト16敗退だったが、チェルシーの堅実な戦い方はあらゆるチームを苦しめる事が出来ただろう。今のベスト4にチェルシーが割って入っていても不思議はない。
だからこそ来季に期待できるのであり、毎年安定した成績を残せるのだ。国内リーグのアウェイでCLの肩慣らしを進めるのが良いやり方かは分からないが、モウリーニョのやり方を退屈という一言で片付けるのはあまりにもったいない話である。
常に見る者を楽しませるのか、トロフィーを獲得する事で楽しませるのか・・・。ヴェンゲルをはじめとする指揮官もモウリーニョの姿勢を見習う部分があってもいいだろう。