決して派手なテクニックを持ち合わせているわけではないが、点取り屋として自分の身体能力に見合った技術と得点感覚が備わっているという現在・高校3年生の本格派ストライカーだ。
(尚、前節のC大阪堺Lvs岡山湯郷戦のレポートは湯郷からの視点をメインに考察しておりますので、こちらもご参照下さい。)
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試合巧者ぶりを発揮した首位・日体大Fの前に、C大阪堺Lが今季初黒星
写真1:C大阪堺Lvs日体大F、最終スコア
試合は昇格争いに直結する緊張感が漂った。ただ、開始から20分程は常にアウェイの日体大Fが主導権を握った。1つ1つのパスが正確で、「止めて、蹴る」技術以外は際立った個人能力を発揮する選手もいないのだが、とにかくパススピードが速く、ハイテンポでパスワークが繋がるのだ。
その上で元日本代表のベテラン2人=37歳のFW荒川恵理子と33歳のMF伊藤香菜子が落ち着きとアクセントを加えるため、攻撃にしっかりとしたメリハリがついている。また、攻守の切り替えの速さは2部とはいえ、首位に立っている実力は本物だと試合序盤から感じさせられた。客観的に観ても、恐らく今のサッカーは1部でも中位以上の実力はあるだろう。
ホームのC大阪堺Lはそんな完成度の高い日体大Fのパスワークに対して、運動量を活かしたプレッシングで対抗。中盤でボールを奪えた際にショートカウンターで一気にフィニッシュに迫るという攻撃の中、FW宝田や左サイドMF松原志の突破力や決定力という個の能力で単発ながらも鋭さは披露した。
緊迫した中でも守備的になり過ぎず、「個」のC大阪堺L・「組織」の日体大Fと、お互いの良さも見せつつ、前半をスコアレスで折り返したが、後半の序盤に試合は大きく動いた。
50分、日体大Fは<4-4-2>のダブルボランチの1角として出場していたMF伊藤がドリブルで持ち込み、右サイドから中央へ走り込むMF平田ひかりへ浮き球の絶妙なラストパスを供給。平田の左足でのループシュートが決まった日体大が首位決戦の先制点を奪った。
ただし、すぐさまC大阪堺Lも反撃。両チームが共に短時間に何度も決定機を作った58分、カウンターで宝田がドリブルで抜け出し、自ら右45度からの鋭いシュート。GKに防がれるも、ゴール前に詰めた松原志が押し込んで1-1の同点に。
しかし、直後の59分だった。同点となった矢先、中盤でぽっかりと前が空いた事を確認した日体大Fの10番にして主将MF嶋田千秋が大胆な決断をとった。GKに届くあたりでズバッと伸びる強烈な弾道の超絶ロングシュートが突き刺さり、日体大がすぐさま1-2と勝ち越しに成功した。
1度流れが大きく動いたこの時間帯をダブルボランチの嶋田ー伊藤両ベテランを中心に、今度はテンポを落とす事で、前掛かりになったC大阪堺Lの選手達をいなす事に成功した日体大F。終盤は冷静な判断力でシンプルにパスを通すだけでカウンターから幾度も決定機を演出。
日体大は3点目こそ奪う事はできなかったものの、C大阪堺Lのパワープレーを危なげなく防ぎ、アウェイながらも試合を支配したまま1-2と勝利。負けても2位を維持したC大阪堺Lに対して勝点5差で首位独走態勢となる大きな勝利を挙げた。