試合は3-0でバルサが快勝。しかし、75分までは敵地でありながらボールを支配しつつ、主導権を握っていたのはバイエルンでした。ボール支配率では47対53でバイエルンが上回り、チャンピオンズリーグでバルセロナが96試合ぶりにポゼッションで下回った試合となりました。実に8年半ぶりです。
メンバー構成の面で“ロッベリー”を始めとして負傷者続出のバイエルンが、顎と鼻骨を骨折し、直近のリーグ戦では脳震盪の経過観察で欠場を義務付けられていたポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキが強行で先発出場しなければいけない苦しい台所事情。
得点経過としては、77分にバイエルンの低い位置でのビルドアップから左サイドバックのファン・ベルナトがバルサのハードなプレッシングでボールを奪われ、奪った瞬間にフリーだったメッシがボールを受けてそのまま放ったミドルシュートが決まってバルサが先制。ベルナトがスペイン人で、バルサがドイツっぽいゲーゲンプレッシングでボールを奪ったショートカウンターだったのも皮肉です。
2分後にはカウンター気味の速攻からメッシがボールを受けてドリブル。僕的には現在の世界最高DFだと思っているドイツ代表DFイェロメ・ボアテンクが尻もちをつかされる抜かれ方をしてのメッシの個人技からのシュートが決まって2-0。追加タイムにはクリアボールを繋いで拾ったカウンター。メッシのスルーパスからネイマールが確実に決めて3-0としたゲームでした。
前半には強行出場のレヴァンドフスキにクロスからゴール前フリーで迎える決定機もありましたが、それを決めきれなかったバイエルンと、メッシという世界最高の選手との“違い”が決定力で表れた試合だったと言えるかもしれません。
「両方とも俺達のパクリ」 でも、サッカーを楽しむオランダ人
そんな試合をオランダのバルで観ていた僕の隣では、オランダ人のサッカーファンが、「どっちのチームも俺らのパクリ」と揶揄。オランダ代表とアヤックス・アムステルダムでリヌス・ミケルス監督とヨハン・クライフが完成させたサッカーを、クライフがバルセロナで選手としても監督としても成功・完成させ、それをペップもバルサで選手として完成形を体感し、監督として現代版にアップデートして熟成。そして、そのペップがバイエルンへ移植しているサッカーは、オランダ人から見れば、「どっちもパクリ」なのも当然です。 ただし、そうやって揶揄しながらもサッカーを楽しむオランダ人の姿は清々しかった。
「憎しみは無関心からは生まれない」と言います。今、出会った人を第一印象から“好き嫌い”を判断する事はあり、「この人は嫌いだ」はありえますが、最初から「この人を憎んでいます」はありえない。
気になるから憎む、憎んでいるから動向を注視する、憎むには情報量が必要で、そんな関係はサッカーにおけるダービーマッチでもそうだと思います。クラシコと呼ばれるナショナルダービーでも、同地域のライヴァル対決でも、相手を知っているからこそ憎むモノ。バルセロナの熱狂的なファンで、レアル・マドリーが嫌いで憎んでいたとしても、バルサファンはバルサの次にマドリーの事をよく知っていたりするのも同様だと思います。
オランダ人はバルサやバイエルンのサッカーに皮肉を言いながらも、シンパシーも感じています。でも相対的にサッカーを楽しんでいる。それを日本人の僕が聞いて、大方の意味合いを汲み取って異国で交流していて共感している。
やはり、サッカーとは楽しむためのモノであり、コミュニ―ションツールであると思えるアムステルダムの夜でした。
マッチレポートを期待していた方々はすいません。そんな交流の方がサッカーの試合よりも優先されるべき事項だと思いました。デ・カイプでも出会ったフローニンヘンのサポーターにクラブOBでもあるロッベンの学生時代の話を聞いたりもしました。その辺りはまた後日書きたいと思います。