128〗Aviva Stadium / ダブリン

アイルランド発でも大違いのハロウィンと聖なるパトリックの祝祭日

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聖パトリックによるキリスト教伝来以前は、ケルト神話の神々を起源とする自然崇拝と精霊信仰が同国文化の根底にあった。キリスト教において妖精は堕天使の烙印を押され天界では暮らせず、かといって地獄へ堕ちるほどの悪でもない微妙な立ち位置。そこで人間界の地下に妖精界が設けられ、そこに住んでいるのだとか。ケルト文化に深く根付いている妖精の物語を愛し、自身の創作活動に取り入れたのがケルト文芸復興に尽力したノーベル文学賞受賞者のウィリアム·バトラー·イェイツ:William Butler Yeats【1865年6月13日生-1939年1月28日没】。アイルランド上院議員も務めた文学者は日本の能の様式的な表現をケルト神話的要素と融合させ『鷹の井戸』を1916年に発表している。
毎年渋谷で馬鹿騒ぎをしている若者の多くが古代ケルトのサウィン祭に由来することを知ってか知らずか。アメリカではカトリックが神聖を汚すと考えて賛否両論。本来はサタン崇拝のカルト的な祭りとする否定派と、宗教とは関係ない子ども向けのイベントと割り切る肯定派に別れる。死者の霊を呼び戻し生者と交信できるのが10月31日のサウィン。動物の頭を被るおぞましい儀式であった。少なくとも東欧滞在時、日本のように世俗的で商業的なお祭り騒ぎを見たことはない。日本においてハロウィンが盛り上がるのは単なる商業イベントだからであって同じアイルランド発の催しでも文化的なセントパトリックデ-とは根本的に異なる。
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アメリカ講演の際、佐藤醇氏から日本刀が贈られた。1931年に発表された戯曲『復活』には「Satoに捧げる」と記すほど、東洋の精神性と美学を敬愛し、また尊重した。この日本刀はノーベル賞メダルと共に現在ダブリンの国立図書館のショ-ケ-スで一般公開されている。互いの民族の歴史を重んじ尊崇することで両国民が交流を深めるためのセントパトリックデ-。取り敢えず筆者もHUBでグリーンビ-ルを注文して今宵は偉人達に敬意を払って祝杯をあげる。〖第百二十八話了〗
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⏹️写真/テキスト:横澤悦孝 ⏹️モデル:Fiona