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“アンカー・ヤット”失敗、退団報道~ガンバ大阪と遠藤保仁はどうなってしまうのか?

 しかし、2014年のJ1昇格初年度の3冠時にはダブルボランチを組む今野が本能的にボールを奪いに前へ出てしまう癖を、後方でカヴァーする守備面を持ってJリーグのMVPに輝いた。守備力は上がっているとも言えるのだ。

 そして、パスとは、“出し手”だけでなく“受け手”が存在するプレーだ。シュートは自分でシュートを放てば完結できるが、パスはそうはいかない。パスでサッカー界を生きて来た遠藤は、上記したように攻撃に関わる選手の少なさ、二川孝広(現J2・東京ヴェルディ1969)や宇佐美貴史(現フォルトゥナ・テュッセルドルフ/ドイツ2部)のようなビジョンを共有できる選手の移籍により、“らしいパス”が出せなくなった。精度としては蹴る頻度が減ったとはいえ、依然としてセットプレーのキック精度は健在なだけに、衰えてはいないはずだ。

 3冠を達成した2014年シーズンにしても、G大阪の攻撃はパトリック(現サンフレッチェ広島)と宇佐美による“J最強2トップ”に頼り切りだった。西野監督時代のポゼッションサッカーではなく、ボール奪取時の瞬間的な攻守の切り替えによる“トランジションサッカー”が奏功して3冠に至っていた。

 ボールを奪うとマニュアルに沿うかのようにパトリックが得意とする前線右サイドのスペースを目がけた中長距離のパスをMFの今野や阿部を始めとした、ほぼ全員が出していた。パトリックがそのスペースに走っていない時にも蹴り込んでいたことを考えると、そこには選手による“判断”ではなく、“規律”を守るかのように攻撃する姿が見て取れた。唯一、遠藤だけが宇佐美の足下へ縦パスを入れたり、速攻に固執し過ぎるチームを落ち着かせるような緩いパスで緩急の変化やバリエーションをもたらしていた。俗に言う“色をつけていた”というニュアンスだろう。白黒だけでは味気ないのだから。

“同期”ピルロ&シャビと同格の司令塔・遠藤が求める“遊び心”とは?

 G大阪のファン・サポーターだけでなく、日本代表のファン・サポーターの方やサッカーにあまり関心のない方でも、

「チームとしては機能していると思います。あとはもう少し“遊び心”があれば、もっとこのチームは強くなっていくと思います」

と、いう遠藤の言葉をよく耳にしたことがあるのではないだろうか?この遠藤の言うところの“遊び心”とは、オープンスペースやフリーになっている味方にだけパスを出すのではなく、DFのマークを背負った宇佐美や二川の足下にパスを出すことではないだろうか?なぜなら、宇佐美や二川はDFにマークされていても、利き足の右足側から30cmマークが外れていれば“フリー”な選手と同様にプレーできる選手だからだ。そして、遠藤は彼等の利き足へパスを“つける”レベルの選手だ。このクラスになると、パスは“出す”のではなく、“つける”のだ。

 そんな遠藤からの足下へのパスを受けた宇佐美や二川らは自らターンして前を向き、同サイドのSBの攻撃参加を促す仕掛けをしたり、逆サイドへの超絶サイドチェンジ、ドリブルやワンツーを駆使した中央突破と多彩なアイデアを捻り出せる。仮にそれらが出来なくても、遠藤へリターンパスを出せば、遠藤自身がそれらを実行するはずだ。

 しかし、そうした“遊び心”あるパスは、日頃から
「ポゼッションしてるだけでは意味がない。無駄なパスが多過ぎる」
、との言葉が多い長谷川監督にとっては、“無駄なパス”なのだろう。守備に注力する指揮官からすれば、“遊び心”あるパスはリスクにしか思えないはずだ。

 筆者は司令塔としての遠藤保仁が、ピルロやシャビと同格にいるMFだと考えている。大き過ぎる差は、ピルロやシャビの周囲には宇佐美や二川のような感覚を持つアタッカーが勢揃いしていたからだ。「大袈裟過ぎる!そんな訳がない!同列に見れない!」と思われるかもしれないが、日本が世界に追いつき、追い越すためには、これくらいの基準で見ていかないと世界には勝てない。ましてやパワーやスピード、高さのような身体的武器を必須とするポジションや役割ではないだけに、この部分だけは世界の名手と肩を並べていると思いたいし、実際に遠藤がバルセロナやACミラン、ユヴェントスでプレーしていれば、彼等と同じ水準でプレーできていたはずだ、と思っている。

 今季は先発を外れてベンチで90分間を過ごすことも多かった時期があった遠藤には、ここに来て退団や移籍の報道がなされている。ただ、それらの報道の指摘は、「出場機会を求めて」なのだが、彼は出場機会を求めているわけではないだろう。G大阪であれ、どこであれ、「自分の納得できるサッカーをしたい!」、と。物静かで寂しそうな背中はそう語っているように感じる。新たな監督だろうが、新たなチームだろうが、納得させられるだけの自信も能力もあるのだから。

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