今年の1杯(チーム)はメンマ(サイドバック)が最も際立っていた。特にエクトル・ベジェリンというメンマはそれだけで味わい深い逸品に仕上がった。ナチョ・モンレアルという銘柄の安定感は、昔ながらで普遍的な中華そばにぴったりだ。スペイン代表のビセンテ・デル・ボスケ監督には今よりも度が強い眼鏡やコンタクトレンズの着用をお勧めしたい。
とは言っても、メンマが最も目立つラーメンはいただけない。麺やスープ、チャーシューは一体どうなっているんだ?とクレームの1つも言いたくなる。
ただ、今年は器(ゴールキーパー)を変えた。ペトル・ツエフという伝統工芸の品の良さにより、より引き締まった1杯は見栄えが良くなった。34試合の出場で16完封を記録した守護神の活躍により、トニー・アダムスやソル・キャンベルのようなソリッドなストレート麺(センターバック)ではなく、最近はローラン・コシールニーのようなチヂレ麺で勝負するようになった守備にも手応えがあった。実際、リーグ全38試合で36失点は昨季と全く同じ数字ではあるが、これまでは大量失点が多かったチームは4失点以上が僅かに1試合へと激減した。
しかし、今季はチャーシュー(センターフォワード)の選択に苦心した。ここ3年ほどはスープや麺に上手く絡めるオリヴィエ・ジルーを使っていたが、今季はセオ・ウォルコットという小動物系のチャーシューに賭けてみた。しかし、どちらも一長一短。ダニー・ウェルベックという良品もあるのだが、こちらは発注に限度(2度目の長期離脱)があるようだ。それが近年は攻撃偏重で70得点のラインは超えていたチームの総得点が65に止まってしまった要因ではあるだろう。
店主・ヴェンゲルはスープや麺と絡んでこそのチャーシューの味を求めており、単品(個人技)やチャーシュー丼などでの売上(勝点)は求めてこなかった。しかし、このオフにはズラタン・イブラヒモビッチというチャーシュー単品だけで売上の大幅増を計算できる食材が市場に出回っている。しかも、送料(移籍金)無料だ。今、ヴェンゲルはチャーシュー丼に合う醤油ダレの使い方や配分を考えているかもしれない。
今季最も苦戦した理由は、店主・ヴェンゲルが長年に渡る丁寧な仕事ぶりで同じ路線の味を追求して来たスープにあった。出汁に使う食材にも変化があるし、「同じことを長く続けるには、毎日少しずつ変えていくこと」なんて一見すると矛盾した格言もある。
しかし、そのスープの水を変えなければいけない事態になれば大変だ。ここ数年、ヴェンゲルはサンティ・カソルラという水を使って来た。カソルラ水を使って丹念に出汁をとったスープがこの店のベースだった。それが今季は急に約半年もの間で使用禁止となった。カソルラ水を“飲む人”(ダニー・ドリンクウォーター/レスター・シティ所属のイングランド代表MF)がいたからだろう。
今季リーグを制したレスター・シティはアーセナル相手に2戦2敗している。おそらく、コレはドリンクウォーターが直接対決でカソルラ水を飲んでいるところを現行犯逮捕されるのを恐れたからだろう。というのが筆者の見解だ。