今年9月、マンチェスター・ユナイテッドに所属するFWウェイン・ルーニーがイングランド代表通算50得点目を挙げた。その得点により、彼はイングランド代表歴代最多得点者となった。

 しかし、「イングランド代表史上最高のストライカーは誰か?」という問いに対し、ルーニーを挙げる人は少ないだろう。ルーニーが通算得点記録を更新するまでの記録保持者である49得点のサー・ボビー・チャールトンの名前を挙げる人も少ないだろう。

 ルーニーにしても、チャールトンにしても、彼等のメイン・プレーゾーンは中盤のエリアにもある。得点数だけで評価されるような「ザ・ストライカー」ではないからである。また、少し残念なのは髪が薄いルックスの部分もあるかもしれない。

 だが、そう言わせるのは正真正銘のストライカーであるゲーリー・リネカーの存在があるからだ。

Jリーグにやって来た「メキシコW杯得点王」

 1993年に始まったJリーグ。世界各国からワールドカップや欧州各国リーグで活躍していたスター選手も集まっていた。

 当時は小学生だった筆者もJリーグを初めて生観戦した。そして、初めて生で観た世界的スター選手こそが、当時は名古屋グランパスエイト(現・名古屋グランパス)でプレーしていた元イングランド代表のFWリネカーだった。

 1986年のメキシコW杯。一般的には同大会を制したアルゼンチンと、その優勝の原動力となったディエゴ・マラドーナの存在が強烈な印象を残した事で、「マラドーナの大会」と呼ばれている。しかし、その大会の得点王は6得点を挙げたイングランド代表のリネカーだった。

 リネカーは1990年のイタリアW杯でも4得点を挙げるなど、W杯通算で12試合の出場で10得点を記録している。代表通算でも80試合の出場で歴代3位の48得点。彼は大舞台に強いエースだった。

 イングランド1部リーグでも3度の得点王を獲得している彼はスペインのバルセロナでもプレーした。しかし、バルサでは最初の2年はストライカーとして起用されるも、個人成績とは裏腹にチームは低調。彼が加入3年目に就任したヨハン・クライフ監督の下では右ウイングとして起用され、得点を狙うのではなく攻撃の幅を作る役目を与えられた。当然、それを心身両面で受け入れられなかった彼は移籍を決断した。

 彼の得点のほとんどはエリア内でのワンタッチゴールだ。イングランドがキック&ラッシュと呼ばれる古典的サッカーを揶揄されるが、身長175~177cmほどのリネカーはロングボールを受けるようなFWではない。両ワイドのスペースを素早く使うスピーディーなサイド攻撃からのクロスボールをワンタッチで決めて行くのが“職人芸”であるFWだった。現在のサンフレッチェ広島FW佐藤寿人に似ているプレースタイルも持つ。MF青山敏弘との阿吽の呼吸でスペースにロングボールを引き出してスピードで相手DFを抜き去って得点するようなパターンもリネカーは持っていた。まさに“ザ・ストライカー”そのもの。