リードして引き気味になったUAEの戦略もあって、30分以降はセットプレーやミドルシュート、サイドからのカットインしてのドリブルシュートなどは見せたものの、アイデアのあるプレーや身体以上に頭の切り替えが遅いプレーが続き、UAEの守備を崩せないままUAEの1点リードで前半終了。
目次
シュート35本、CK18本と圧倒も枠内シュート8本のみ
1点リードされた日本は後半開始から乾に替えて武藤を投入。彼がどんどん積極的に仕掛けては中にも動き出して好機を構築。
しかし、49分に長谷部がパスコースがないまま中盤から突進してオマルにボールを奪われ、彼のドリブルとパスによる速攻。最後はオマルの浮き球ラストパスに中央を抜け出したマブフートが合わせきれずにGK川島の飛び出しで事なきを得ましたが、これがこの日の日本の中盤の機能不全を物語っていました。
直後にパスコースすら作れない遠藤は柴崎と交代。武藤と並んでブラジルW杯後に時代の日本を背負うべき存在として期待を受けるホープに、この土壇場で頼る事になりました。
OB選手のようだった遠藤がピッチを去ると、長谷部が落ち着きを取り戻し日本は主導権を完全に握って押し込み始めました。また、柴崎は手を替え品を替えて攻撃のアイデアを出し尽くし、武藤も溌剌とプレーするうちに、いつしか試合は一方的に日本が押し込む展開となり、65分には早々と3枚目の交代カードを切るアギーレ監督は、岡崎に替えて長身FW豊田を投入。相手DFとボールのないところでつば競り合いを演じる豊田の投入で、バイタルエリアではフリーで前を向ける日本の選手が急増。
そして81分でした。柴崎がバイタルで前を向き、狭いスペースながらも本田とのワンツーで前進。リターンパスをダイレクトで右足一閃したミドルシュートがゴールネットに突き刺さって、20本以上(UAEは3本)のシュートを放っていた日本がついに1-1の同点に。
しかし、この後再三迎えた決定機を香川や豊田が決めきれずに延長戦へ。この時点でシュート数は31本。
延長に入って早々に長友がハムストリングを負傷。交代枠を使い切っているため、以降は足を引き摺って歩くのがやっとの長友を左SBの位置のままプレーさせたため、左サイドのスペースから攻撃を仕掛けられず。延長後半になって柴崎が右SB、高徳を左SBに回すも決定機と言えるほどの攻撃は見せられずにPK戦へ。シュート数も35本と90分から伸びなかった事が、延長の30分間の消化不良を感じさせました。
PK戦、1人目の本田が大きく外し、その後はUAEが1人失敗。日本のその後の4人はリカバリーするも、6人目の香川が力み過ぎて失敗。頼みの守護神・川島は1本も相手のキックを止める事は出来ず。ベスト8敗退でアジアカップを終えました。
ベスト8敗退は92年の初優勝以降では96年の加茂周監督時代以来2度目の低成績。八百長疑惑でピッチ外が国内で味方してくれないアギーレ監督の去就、代表復帰したベテラン選手の今後にも波紋を呼ぶ敗退でした。
決定力不足で終わらせてはいけない理由~UAE相手に圧倒出来ない駆け引き不足
この試合の敗因は確かに35本(相手は3本で49分の大ピンチ以来なし)のシュートを放ち、CKを18本(相手はゼロ)獲得しながら、8本の枠内シュートに終わった決定力不足に尽きると思います。
しかし、「PK戦まで持ち込まれた理由が何か」と問われればどうでしょうか?
先制点を入れられていなければ1点は入ったんだから勝てたはずです。そうでなくても決定力不足だけが敗因にはならない理由がこの問いには返答が出来るはずです。確かに最終的にシュート数やCKの数、ボール支配率68%と圧倒してましたが、実は55分から60分ぐらいまでは互角で、超がつくほどの決定機を作った回数ではUAEの方が多かった。開始3分のマブフードが左サイドから抜け出されたモノと、7分の失点の場面、49分の大ピンチの3つもありました。
疲労から来るコンディション不良が原因だったのかもしれませんが、開始15分程までの立ち上がりが悪すぎました。特に中盤のプレッシングが遅く、失点場面でも顕著なように相手のパスワークについていけていない。またはボールを持ってもサポートの動きが遅くてパスコースが少ない。運動量の落ちたUAE相手に押し込んだ事を“圧倒した”とまでは言いきれません。
また、戦術的に考えれば、UAEの方がしっかり駆け引きが出来ていました。簡単に言うと“長友対策”。開始から15分ほどまでは長友の攻撃参加からシュートまで至っていたのは、UAEが中盤フラット型の<4-4-2>のフォーメーションで入り、右サイドMFに入った10番のオマルが守備面で長友の対応についていけなかったこと。ただ、そのエリアで攻撃時はオマルを軸にポゼッションが成立しており、そこから先制点へつながるラストパスも出ました。
先制した事もあり、UAEは15分辺りからオマルを2トップに上げて、ハリルとマブフートを時間帯ごとにサイドMFに下げてポジションチェンジし、アルハマディと3人がオマルの負担を軽滅して攻守のバランスを調整・修正してきました。
このようなピッチ上での駆け引きは日本からは全く感じられませんでした。あったとすれば本田が中央に入って柴崎のゴールのアシストをしたようなシンプルに捌くプレーから好パスを配給するような部分くらい。UAEが中東勢特有のファーサイドへのクロス対応に弱い事を、高徳と乾が察知していたものの、コレも活かきれませんでした。また、日本がブラジルW杯初戦のコートジボワール戦で先制した状況に、この日のUAEがなっていたようにも感じますが、ドログバではなく“トヨグバ”を投入した日本は彼を活かすクロスが少なかったのも残念に感じました。