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宇佐美貴史が武藤嘉紀に劣る理由 ①海外移籍を成功させられないフロント

宇佐美貴史が武藤嘉紀に劣る理由 Jリーグの意義とクラブ経営が問われる

 ガンバ大阪所属の日本代表(やっとこの枕言葉を使える)FW宇佐美貴史がリーグ戦ではクラブ史上タイ記録となる6試合連続ゴールを含め、J1リーグでは開幕から全10試合に先発出場する中でリーグトップの9ゴール(PK1、ほぼオウンゴール1)を記録しています。同様に宇佐美と同年生まれで、FC東京所属の日本代表FW武藤嘉紀も開幕からリーグ全11試合に先発出場して8ゴールを記録し、得点ランキングではトップの宇佐美を1ゴール差で追い上げています。

 今季から武藤は所属するFC東京では、本来のサイドアタッカーではなくセンターフォーワードでの起用により点取り屋としてプレーしています。それもあって、この同級生2人がどうしても比較されてしまうのも仕方ないでしょう。しかし、宇佐美にはユース年代からエリートとして各世代別の日本代表でエースを務めた国際経験、高校1年生の末にプロ契約を結び、高校3年生でJリーグのベストヤングプレーヤーに選出され、翌年には世界屈指の強豪であるドイツ1部リーグのバイエルン・ミュンヘンへ移籍した輝かしい経歴がある一方、武藤は世代別代表の経験が皆無で、FC東京の下部組織に所属していながら、プロ契約は慶應義塾大学へ進学してからの在学中。昨年には日本代表に招集された武藤ですが、彼は大学4年生で特別指定選手の扱いからスタートしており、今年が実質プロ1年目という選手。それでもこの2人の間には、宇佐美の日本代表キャップ2試合に対して、武藤が11キャップという逆転現象が存在します。

 これは宇佐美だけでなく、Jリーグや日本サッカー界にとっても大問題です。ガンバ大阪で4年、ドイツで2年を過ごした選手と、FC東京で1年プレーしただけの選手が比べられている時点でJリーグとクラブユースの意義が問われています。ましてや宇佐美は各年代別代表チームでもエースとして君臨して来た選手だけで、ガンバ大阪のユース組織は国内トップ・トゥ・トップの育成組織であるだけに問題は根深く感じます。

 もちろん、それは裏を返せば、武藤を育てた大学サッカー界のレベルの高さを証明するモノですが、さすがにこの事態は大学サッカー界からしても、「本当にコレで良いのか?」と首をかしげたくなるのではないでしょうか?

フロントのレベル差~海外移籍後に大成した例が皆無のガンバ大阪

 特に武藤の場合は大学時代に自らフィジカルの強化を進んで取り入れているため、自分で筋肉の細かい部分の鍛え方やコンディション調整を身につけており、自身のキャリアについても長い目で見て冷静に自分で選択している事が窺えます。FC東京というクラブが長友佑都のイタリアへの移籍オペレーションでも高く評価されているように、欧州の移籍市場のスキームをクラブが理解しているのも大きいと思います。

 逆にガンバ大阪は過去に稲本潤一や宇佐美貴史をそれぞれ世界屈指の名門であるイングランドのアーセナルや、ドイツのバイエルン・ミュンヘンからオファーを受けながら、共にレンタル移籍させるなど、海外移籍後の選手や移籍先のクラブにとって不利益になるような状況を生む事しか出来ていないクラブやフロントに問題があると言えます。また、家長昭博がスペインのマジョルカ移籍時は契約が残っているのに無料で完全移籍させた上でレンタル料を2度払ってチームに復帰させるなど、日本のクラブが欧州のクラブに笑い者にされかねない事象を作ってきている程です。

 アーセナルもバイエルンも強豪クラブである以上に世界最高峰の健全経営のクラブ。日本人選手の移籍金を出すかどうかで渋るほどの事もないし、逆に若手選手なら自ら保有権を持ってレンタル移籍に出すなり、言語学習を徹底させる時期やチーム戦術を理解させる準備期間を設けて戦力にしたくても、加入から半年程で完全移籍で買いとるかどうかのオプション行使の有無の判断をしないといけないのではどうしようもありません。選手側もやっと現地の生活に慣れたところで「ココからだ」と思った頃に、クラブからは「来季いない選手を起用しても仕方ない」となってしまうのが当然の帰結。

 代理人やマネジメント事務所との兼ね合いの問題も含めて、この問題は今後、再度の欧州のクラブへ移籍するであろう宇佐美の障害にもなりえます。稲本潤一・大黒将志・宮本恒靖・安田理大・家長昭博・宇佐美貴史といった多くのユース出身選手を日本代表、そして世界へ輩出しているにも関わらず、未だに海外のクラブで大成した選手が皆無なのはこういったクラブの問題と言えます。現在は逆に宇佐美以外に海外クラブからオファーが来る選手がいない事で国内での競争力を維持しているガンバ大阪ですが、宇佐美が再びクラブを去る時までに解決してもらいたいところです。