『プレナスなでしこリーグ』 が大詰めを迎えている。
なでしこリーグ1部は残り4試合。優勝争いは、現在首位でリーグ3連覇中の日テレ・ベレーザ。そして、世代交代に成功し、ベレーザと勝点5差の2位・INAC神戸レオネッサに絞られた。“2強”の直接対決が第16節(10月20日、@味の素フィールド西が丘)に控えているため、この結果がそのまま優勝争いの行方を左右するだろう。
そして、1部よりも1試合早く試合を消化している2部では、早くも伊賀フットボールクラブくノ一が3試合を残して優勝。来季からの1部自動昇格の権利を獲得した。
ただ、なでしこ2部では独走優勝をした伊賀に続き、1部9位チームとの入替戦出場権を与えられる2位争いが白熱。一時は2位から8位までの7チームが勝点3差となる大混戦が続いている。
公式戦9戦無敗!2位浮上のASハリマアルビオン
そんな中、ここへ来て2位をキープし始めたのがASハリマアルビオン。9月から再開されたリーグ後半戦に入って3連勝するなど、無敗をキープしている。第14節では伊賀に1-1で引き分けたものの、終盤までリードする展開だった。
今年のハリマはリーグカップとの2冠を達成した伊賀に対して、公式戦1勝2分1敗。リーグを独走した伊賀を最も苦しめているハリマが現在2位に位置しているのは、当然と言えば当然なのかもしれない。
10月6日に行われた第15節、ハリマはホームのウイング陸上競技場にバニーズ京都SCを迎えた。台風25号の接近により開催が危ぶまれた試合は天気こそ晴れたものの、強風の勢いは凄まじく、試合開始直前には得点ボードが吹っ飛び、すぐ後ろにいた筆者も危険を感じるほどの強さだった。
当然、試合はその強風の影響が強く、特に前半は両チームともにトラップもままならない状況でチャンスを作ることもできなかった。
しかし、風の勢いがやや弱まった後半、ハリマは開始早々に先制に成功する。奪ったボールを確実に右サイドへ展開し、ハーフウェイライン付近から右サイドバックの須永愛海が戻り切れていない相手DFラインの裏に絶妙なロングフィードを浮き球で落とす。風で少し戻されてバウンドしたボールを、途中出場のFW新堀華波(上記写真:背番号30)が左足を一閃。豪快なボレーシュートがネットを揺らした。今季、鳴門渦潮高校から加入した高卒新人の新堀はこれまでアシストこそ記録していたが、これが嬉しい公式戦初ゴール。鋭い動き出しやドリブル突破を持つ今後も楽しみな存在である。
先制後も、ハリマは自陣でバニーズのプレスを横へ交わしてからの効果的なロングパスによる速攻、同サイドでのサイドバックとサイドハーフの連携による崩しなど、リスクを回避しながらもチャンスを作る。
この試合でボールを支配したのはバニーズで、自陣でのプレーが多くなったハリマ。それでも奪ったボールは丁寧に繋ぎながら、ダイナミックな展開で攻撃を仕掛けたハリマの方が上手だった。
試合巧者ぶりを発揮したハリマは、そのまま1-0で勝利。これで後半戦に入って4勝2分の無敗で2位をキープ。リーグカップを3連勝で締め括っているため、公式戦では9戦無敗を継続中だ。(下記順位表を参照)
まさに「進撃のアルビオン(ギリシア神話の巨人に由来)」と、どこかで聞いたタイトルが付きそうな快進撃の理由とは?今季ここまでの戦いを、監督や選手の証言はもちろん、筆者の考察も交えて振り返ってみたい!
「寸足らずの毛布」だった春先のアルビオン
筆者が今年のハリマを初めて観たのは、2月の伊賀で行った練習試合だった。今季の新体制発表会見で、「去年までは守備を重視してカウンターを狙う戦いだったが、今年はボールを支配して攻撃的に戦う」という、田渕径二監督の言葉は、試合前のウォーミングアップから見てとれた。
パス回しのメニューだったが、昨年までは真ん中にボールを奪う敵役を1人か2人入れて外側でパスを回すだけだったのが、敵2人の間に味方1人を入れて中央を使ったパスワークに取り込むメニューに切り替わっていた。日本代表経験のある大黒柱的存在のMF千葉園子も、「去年まではなかった」と言うそのパス回しの練習では、他にも細かい条件やルールを変えながら多種多彩なメニューをこなしていた。
ただ、その2月の段階では守備的なチームからの転換期。昨年までの主力4バックが全員退団するという非常事態で、全くチームとしては形になっていなかった。伊賀には二桁近い大差で敗れ、シュートチャンスも2回ほどしかなかった散々な出来だった。
その後、3月前半に伊賀で開催された『忍びの里レディース』(開幕前交流戦として行われた4チームによるトーナメント)では公式戦で通用するレベルにまで来ていたが、それは「通用するレベル」であって、「勝てるか?昇格を狙えるレベルか?」と問われたら、かなり疑問だった。開幕4日前に迫った千葉も、「ハマったら面白いサッカーができますけど、危険な場面も多い」というのが、この時期の印象だった。
そして、その開幕戦では昨季リーグ最少失点のオルカ鴨川FCを相手に、敵地で0-3の快勝。しかし、その後はホーム開幕戦でニッパツ横浜FCシーガルズに0-5の大敗(上記写真)を喫するなど、前述の千葉の言葉通りの戦いぶりは続いた。