10月14日、日本はブラジルに0-4と完敗を喫した。いまさらニュースで連呼する必要のないほどのスーパースター、ネイマールにやられてしまった。
ネイマールが天才なのは何年も前から分かっていた事であり、世界がマークするアタッカーにいとも簡単に4得点を許したのは大いに反省すべきポイントだ。0-4というスコアだけを見れば、全く収穫が無い試合だったように見える。内容は最悪だったが、その中でアギーレが必要とする要素を持つ選手をある程度見極めることが出来た。
今回はアギーレが必要とする「スピリット」。魂の強さが試されたゲームでもあった。
勝負を諦めた選手は何人いたか
世界のトップであるブラジルを相手にしながら、アギーレはあくまで親善試合というスタンスを貫いた。ほとんど代表経験が無い森岡、田口、小林、太田、田中順也らを先発に並べ、テスト感が漂うラインナップとなった。
前半18分、日本は一瞬の隙を突かれてネイマールに先制点を許した。あの場面ではアンカーの田口が中央から外れたスペースを森岡が埋めておらず、3センターの連携不足がピンチを招く形となった。森岡、柴崎、田口の3センターが急造なのは分かっていた事であり、90分間ミス無く試合を終える事など当初から想定していない。問題は失点してからだ。
ピッチコンディションが劣悪だった事もあるが、前半途中には足が止まりだす選手もいた。森岡からは闘う意識が 全く感じられず、太田や田中順也もブラジルに完全に腰が引けていた。
そんな森岡をアギーレは後半から本田圭佑と交代させている。これは森岡の能力がブラジルに通用しなかったゆえの交代ではなく、森岡がメンタル面で折れてしまっていた事が理由のはずだ。塩谷、田中順也、太田、田口らもブラジル相手に萎縮してしまい、本来の力を発揮できていなかった。ブラジル相手に防戦一方となった中でも、アギーレが最も求める闘う姿勢を維持できた選手が果たして何名いただろうか。それを見極めることが出来ただけでも今回のブラジル戦には一定の成果があったといえよう。
アギーレは1月までの親善試合6試合をアジアカップへの23名を選抜するために使うと公言している。9月からの2試合を合わせて現在4試合が消化された。今回のブラジル戦が最も酷い内容となったが、闘う姿勢を求めるには最高の場だった。日本人が最も苦手とする闘う気持ちを確認できたのは、せいぜい武藤と岡崎くらいのものだった。岡崎よりも柴崎や森岡の方が足元の技術には優れていたかもしれない。
しかし、岡崎には地を這いつくばってでもボールを奪おうとする姿勢がある。それはサッカーで最も大切な姿勢であり、ブラジルもそれは理解していた。その証拠に、ブラジルはほとんど球際の競り合いで負けていない。ボールの奪い合いで勝つことの重要性を理解しているのだ。
今回の試合で、確実に森岡は選外となるだろう。田口もアンカーとしては機能しない事が分かった。田中順也も左利きという点のみで選ばれているものの、戦力になるとは考えづらい。今回のブラジル戦でアギーレは数人の選手を落とす作業に成功したはずだ。
アジアカップまでの親善試合は残り2試合。11月14日に対戦するホンジュラスも闘志を前面に押し出すスタイルのチームで、日本がどこまでファイト出来るかが問われる。
18日のオーストラリアもフィジカルの強い国として有名で、日本は幾度となく苦戦を強いられてきたライバルだ。この2試合でさらに戦える選手を選抜する作業が進むことだろう。
気持ちを見せれば4失点は無かった
この試合、日本は1枚もイエローカードを受けていない。0-4と徹底的に叩きのめされたにもかかわらずだ。世界の強豪チームであれば、危ない場面ではファールを使ってでも止めたはずだ。この試合でも日本はミスからピンチを招く場面があったが、カウンターを受けた際に相手を引っ張ってでも止めるべきだった。イエローカードまではいかない「利口なファール」も時には必要だ。日本の良さはスポーツマンシップにならったクリーンなプレーだが、サッカーというスポーツにフェアプレー志向は向いていない。どんな強豪チームもダーティなプレーをやってのける。いわばサッカーは日本人には向いていないスポーツともいえる。
やはり世界に近づくためにはアギーレの母国であるメキシコのようにダーティなプレーを覚える必要がある。2018年までの4年間でどこまでアギーレが闘う姿勢を植え付けられるかが1つのカギとなる。真正直なプレーで勝てればそれに越した事は無いが、弱いチームが強いチームに勝つには多少は荒いプレーに走る必要もあるという事だ。