サッカーでよく話題になるのが、ハンドの判定。特にPA内でのハンドは常に物議をかもす事となる。故意にハンドを犯したと分かるようなプレーであればイエローカードなどの罰則を与えるべきだが、相手の蹴ったボールが偶然手に当たった場合もハンドと取った方が良いのだろうか。
このあたりは審判の好みで分かれてしまう。その事についてFIFAは、14-15シーズンより偶発的なハンドは反則と判定しないと決議を出した。つまりPA内で偶然手にボールが当たった場合でも、PKとはジャッジしないという事だ。
しかし、未だに不可解なハンドの判定を見かける事が多々ある。審判の好みで判定が分かれてしまう試合があって良いのだろうか。判定基準について掘り下げる。
☆物議をかもした元日のプレミアリーグ
元日におこなわれたプレミアリーグ第20節で、物議をかもす試合が2つあった。1つは2-2のドローに終わったレスター・シティVSリヴァプール。もう1つは1-1のドローとなったストーク・シティVSマンチェスター・ユナイテッドである。
物議をかもしたのは、PA内でのハンドについて。レスターとリヴァプールの試合では、リヴァプールに2つのPKが与えられており、いずれもPA内でのハンドを取ったものだった。
1つ目はリヴァプールの選手が左サイドから折り返したボールがレスターDFの左手に当たったもの。この時レスターのDFはクロスに対してスライディングをかけており、明らかに故意のハンドでは無かった。
しかし主審のジョーンズは迷わずPKの判定を下した。
もう1つは、ジェラードがPA内をドリブル突破しようと浮かしたボールがレスターDFの左手に当たったもの。これも故意とは考えづらいものだったが、主審はPKの判定を下した。どちらも偶発的に起こったハンドに見えたのだが、これはFIFAが提言したものと食い違いがあるのではないか。
一方のストークとユナイテッドの試合では、ストークの選手のヘディングシュートがユナイテッドDFのスモーリングの手に当たったが、主審のマイケル・オリバーはハンドと取らなかった。これもストークの選手とスモーリングの距離が近かったため、故意によるものとは考えづらい。
ただ、ヘディングシュートは枠を捉えており、ストークのベンチからは不満の声も上がった。ボールの勢いも強く、スモーリングの手に当たった事は誰が見ても明らかだった。これに比べれば、レスターのDFが犯した2つのハンドが可愛く思える。
ハンドと取らなかったマイケル・オリバーという主審は、プレミアのみならず世界的に有名な人物だ。判定に問題があるとは思わないが、彼は今季PA内で起こったハンドに対して1度も笛を吹いていない。FIFAの提唱するルールを忠実に守っている人物と言える。
レスターとリヴァプールの一戦を裁いたジョーンズと、ストークとユナイテッドの一戦を担当したオリバーのどちらが正しいとは言い切れない。しかしPA内でのハンドに毎回笛を吹いていては、サッカーとして面白くないようにも思う。
現にレスターとリヴァプールの試合でリヴァプールが挙げた2ゴールはどちらもハンドからのPKであり、これが無ければレスターは金星を掴んでいたかもしれないのだ。
さらに1月4日におこなわれたリーガ・エスパニョーラ第17節、バレンシアVSレアル・マドリーの一戦でもPA内でのハンドからPKが取られている。この場面では、レアルの選手が蹴ったクロスがネグレドの右腕に当たったプレーをハンドと判定した訳だが、このプレーは蹴った選手とネグレドの間に距離があり、故意と判断されてもおかしくはない状況だった。
しかし、故意か故意でないかの判断を下すのは難しい。これは主審の感性に左右されてしまい、意識を共通させるのは不可能だ。それならばマイケル・オリバーのようにPA内でのハンドの全てを無視するなど、徹底した方が良いだろう。
もし判定にブレがあれば、「さっきのハンドはPKじゃないのか!?」と選手や監督からも不満が出るし、「先週の主審はPKと取ってくれたぞ!」などと言い出す者もいるだろう。これではゴールを奪いに行くのかハンドを奪いに行くのかサッカーそのものに支障をきたしかねない。
南米ではPA内でハンドを誘発するための練習をおこなうと聞いた事もある。ゴールを狙ってシュートを撃つのではなく、相手の手を狙ってシュートを撃つのだ。これも立派な戦術の1つだが、これに審判団が翻弄されるのはマズイ。
PA内でのハンドをどのように扱うのか。もう1度審判団で協議をする必要があるだろう。