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オランダカップ決勝プレビュー、ズヴォレVSフローニンヘン~オランダらしい打ち合いを期待

 前述の昨季KNVBカップ決勝に続き、ズヴォレの偉業は続きます。今季リーグ開幕直前、リーグ戦とカップ戦の王者が戦うヨハン・クライフ・スハール(各国で言うスーパーカップ)でも、そのアヤックスを1-0で破り、屈辱の大敗でリヴェンジに燃えていた王者を返り討ちにし、クラブ史上2つめのタイトル獲得で幸先の良いシーズンをスタートさせたのです。

 今季のリーグ戦では2試合を残してこれまでのクラブ史上最高勝点だった41を大幅に更新する47ポイントをすでに獲得。オランダリーグは全34試合のリーグ戦を終了すると、リーグ戦の4~7位の間で次のシーズンのヨーロッパリーグ出場権を争うプレーオフが行われるのですが、ズヴォレは現在7位。過去最高位を目指し、残り2試合で8位・フローニンゲンとは勝点4ポイント差でプレーオフ進出に王手の位置をキープしています。

 その上で昨季同様にKNVBカップでも勝ち進み、準決勝で今季の開幕前に司令塔のモコチョを引き抜かれたトゥウェンテ相手にPK戦の末に勝利しての決勝進出。KNVBカップの連覇という偉業に挑みます。

 オランダに置けるタイトルの歴史というのは、プロ化した1956年以降の今季までの59シーズンで、”3強”と言われるアヤックス、PSVアイントホーフェン、フェイエノールトの3クラブが実に53回のリーグ優勝を果たす独占状況。3強以外のクラブにとっては高嶺の花となっています。上図のようにKNVBカップではリーグ戦ほどの偏りはないものの、3強以外のクラブが大会を連覇するとなれば歴史に名を残す偉業で、それをエールディビジ再昇格に8年を費やしたズヴォレという小クラブが最昇格後3シーズン目で王手をかけているのです。

広島でもプレーしたヤンス監督が標榜する [4-2-4]の超攻撃サッカーと未完のタレント達

 このズヴォレ躍進の鍵になっているのは2013年夏から就任したロン・ヤンス監督の存在。現役時代はサンフレッチェ広島の前身であるマツダSCでもプレーしたオランダ人監督ですが、彼が志向するサッカーはほぼ[4-2-4]と言えるくらいのシステムを採用する超攻撃的スタイル。小クラブゆえ、格上に対して中盤でのポゼッションを譲る試合もあるようですが、中盤でのボール支配と攻撃志向は別物で、その場合は前線からの積極的なプレッシングによるショートカウンター戦略に切り替えて攻撃マインドの高さを貫いています。

 攻撃サッカーの伝統が植え付けられているオランダに置いても、その痛快なズヴォレのサッカーは選手達の間でも評判が高く、タイトルまで獲得できるようになった昨季を経て、今季からはアヤックス出身の快速ウインガーであるジョディ・ルコキを完全移籍で獲得。ロンドン五輪直前のトゥーロン国際ユース大会で当時のU23日本代表が散々1人にやられ続けた“あの右ウイング”です。他にも10代でPSVに引き抜かれながら芽が出なかったステファン・ナイラント(今季チーム最多のリーグ11ゴール)。CSKAモスクワで10代にして日本代表MF本田圭佑をトップ下に据えた1トップとして活躍していたチェコ代表FWトーマシュ・ネチドもレンタル移籍で獲得。ビッグクラブで花が開ききらなかったとはいえ、若きタレントが徐々に集まって来ています。

 今年初頭のアジアカップで優勝し当コラムで大会MVPに選出した豪州代表DFトレント・セインズベリーもこのクラブの主力で、センターバックとして最後尾からもパスを繋ぐ攻撃スタイルに一役買っています。アジア人が成功しにくいCBというポジションで結果を出しているセインズベリーのオランダでの活躍は日本代表CB吉田麻也を明らかに越えています。セインズベリーもルコキもまだ22,23歳。彼等やオランダU21代表のMFムスタファ・サイマクという若手タレントがイングランドやスペイン、ドイツでプレーする日も近いかもしれません。

敵将が長期政権を築いたフローニンヘン ロッベン、スアレスという”本格派”がデビュー

 そのズヴォレの対戦相手はオランダ北部・フローニンヘン州の州都フローニンヘンを本拠地に置くFCフローニンヘン。予算ではズヴォレよりは上でしょうが、現在のエールディヴィジでの順位は7位のズヴォレが勝点47に対して、フローニンヘンは同43ポイントの8位で同格。このKNVBカップ決勝で対戦するズヴォレのヤンス監督が2002年から2010年までの長期政権を築き、彼の監督としての確かな足場を固めたクラブでもあります。そのフローニンゲン出身の選手としては現在はバイエルン・ミュンヘンでプレーするオランダ代表FWアリエン・ロッベンがおり、ウルグアイ代表FWルイス・スアレス(現・バルセロナ)が初めて国外でプレーしたクラブでもあります。

 筆者の勝手なイメージでのフローニンヘンは、サンフレッチェ広島でプレーした元オランダ代表の左ウイングであるピーター・ハウストラが監督をしている若手集団のままでしたが・・・ハウストラ監督は就任初年度にクラブ史上最高位となる5位フィニッシュを果たしながら、2年目を14位で終えると2012年5月に解任されていました。最近はオランダリーグを日本ではあまり放送しないので・・てっきりまだ監督をされているかと思いました。

 現役時代は左足1本でプレーする典型的な左ウイングだったハウストラ。彼が1995年にJリーグにやって来た時、それまでどころか現在までJリーグではあまりいない“本物のウイング像”と言える彼の独特のボールの持ち方や間合い、相手DFを抜き切らずに上げるクロスに魅了されていたので、せっかくオランダまで来たのに見れないのは残念です。ルックスも見栄えが良い人でしたので。現在はインドネシア代表のテクニカルディレクターをされているようで、コレはこれで衝撃です。