海外挑戦のボーダーラインは24歳までと言われ、それを過ぎれば移籍は難しくなる。24歳までといわれる理由は、海外挑戦1年目は環境への適応に苦労するとの配慮があり、2年目の爆発に期待しているからだ。
大袈裟に言えば1年目は棒に振ってもいい覚悟でクラブは日本人をリストアップする。成長を見越す代わりに若い選手でなければならない。昨夏にバーゼルへと移籍した柿谷も、海外挑戦ギリギリの24歳という年齢だった。現に彼は環境への適応に苦しみ、今季1年を棒に振ってしまった。
しかし24歳までに海外から目を付けられるのは難しい。なぜなら日本代表で活躍し、国際大会でのアピールが必要だったからだ。24歳までに日本代表で定位置を確保するのは至難の業だ。
しかし今は状況が少し違う。Jリーグで定位置を確保しただけで海外のスカウトが見に来るまでになった。奥川に至ってはJ1でのプレー経験すら無い。明らかに海外スカウトの視野が広がっており、香川や長友が築いてきた日本人選手のブランドが認められたのだ。
☆若者の海外挑戦に最大限のケアを
だが全てを手放しで喜ぶわけにはいかない。若くなればなるほどメンタルが未熟で、海外生活に順応できないケースもある。普段の練習に加えて語学の習得にも力を入れる必要があり、海外からの渡来人として日本にいる時よりも結果を重視されるだろう。
海外へ送り出すだけでなく、海外挑戦に失敗したケースも考えて選手生活のサポートを整えなければならない。海外で潰れたから選手生命は終わりとなってしまっては、日本サッカー界の発展には繋がらない。
高校卒業後にアーセナルへと加入した宮市亮も、海外では全く結果を残せていない。高校では通用したプレースタイルが海外では通用せず、語学の問題もあってコーチからの指導も浸透しづらい。まだまだメンタルが未熟な彼は海外でどう戦えばいいのだろうか。
バイエルンで失敗してガンバ大阪へと帰還した宇佐美も、一歩間違えればドイツで選手生命が終わる可能性もあった。日本に戻る決断がスムーズに進行したからよかったものの、みすみす日本最高縫といわれる才能を潰すところだった。
やはり海外の選手はJリーグに戻る事=キャリアの失敗と捉えており、海外に固執してしまう傾向にある。一方通行に終わるのではなく、海外から日本への帰還も視野に入れたケアをしていく必要があるだろう。
現在の青田買いに近いオペレーションは魅力的である一方、麻薬のように危険を伴う。海外という快楽には自分を見失う危険性も含まれている。そこから立ち直らせるためにも、Jリーグには海外挑戦に失敗した若者を受け入れる受け皿的立場も求められている。
海外挑戦はキャリアアップではなく、武者修行。ダメなら日本に戻れば良い。現在の宇佐美のように、海外で失敗しても日本代表にカムバックできるケースもある。このケースを例外として扱うのではなく、一種のキャリアとして認識を広げていかなければならない。
注目され始めたからこそ自制を。日本サッカー界は徐々に世界の中堅クラスへと足を踏み入れている。その成長スピードを止めないためにも、若者の海外挑戦には最大限のサポートをする必要があるだろう。