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ポルト戦6ゴールの真実〜ペップの力では無い??〜

「バイエルンが蘇った」果たしてそうだろうか。バイエルンはCL準々決勝のポルトとの第2戦で6−1と圧勝し、第1戦の衝撃が霞むほどのパフォーマンスで準決勝進出を決めた。しかし、この試合は様々な点で面白さが詰まった90分間だった。
ただバイエルンが強かったという話で終わらせるのはもったいないほどにだ。

確かにバイエルンは強かったが、その強さはペップの目指していたものなのだろうか。そしてペップの手腕なのだろうか。サッカーの本質を見抜けば面白くなる!!

☆5ゴールはハインケスのおかげ

バイエルンの監督に就任して以降様々なシステムを試してきたペップだが、最近はバルサでも愛用していた4−1−4−1を使用する事が多くなっていた。ゲッツェを中央に配置し、いわゆる「0トップ」スタイルで戦ってきたのだ。
しかし、その戦い方はポルトの監督であるロペテギに研究されてしまっていた。ペップの4−1−4−1の特徴は、早いパス交換で相手の陣形を揺さぶり、最終的にはバイタルエリアを使って崩す事にある。つまり中央突破だ。
サイドを使うのはあくまで相手の陣形を揺さぶるためであり、それをロペテギは理解していた。そして第1戦での記事にも書いたように、ロペテギは中央を固める守備法でバイエルンの攻撃を1点に抑えて見せた。当然ロペテギは第2戦でも同じ守備法を採用し、ペップのサッカーをシャットアウトするつもりだっただろう。

しかしペップは、第2戦に4−2−3−1を選択した。中央にはミュラーとレヴァンドフスキを配置し、まさにオーソドックスな4−2−3−1だった。この日の得点パターンの多くがサイドからのクロスによって生まれており、そこにはポゼッションを重視するバイエルンの姿は無かったように思う。
とにかく縦にスピーディーにアタックを繰り返し、美しさよりも勝利にこだわっていた。試合開始の時点で2点のビハインドを負っていた事も理由の1つだが、この日のバイエルンはあまりに攻撃的だった。

得点が入るたびにペップの喜ぶ姿をテレビカメラは捉えていたが、心中は穏やかではなかったはずだ。なぜなら、この日バイエルンが使用した4−2−3−1はペップのサッカーでは無いからだ。この4−2−3−1は前監督であるハインケスによって植え付けられたものであり、そこにペップの哲学はあまり入っていない。
ハインケスは2年前にハイプレスと縦に素早く展開するダイレクトなフットボールで国内2冠とCL制覇の3冠を達成し、後任のペップに多大なるプレッシャーを与えた。つまりハインケスの4−2−3−1の機能性は過去が証明しており、現実的にはハインケスのサッカーを継続していく方が理に適っているといえる。
しかしペップはサッカー界でも1,2を争うほどの自論を持つ人物だ。ハインケスのサッカーに敬意を払いつつも、いつしかバイエルンをポゼッション主体のカラーに染めていった。

ところが第1戦でも証明されたように、ペップが理想とする4−1−4−1の0トップシステムでは、得点を決める事が出来ていない。ポゼッションする事でゲームをコントロールしているのは事実だが、やはり中央を頑なに固めてくる相手を崩すのは至難の業なのだ。
私が第1戦の記事で指摘したように、メッシ、あるいはリベリやロッベンといった個の力で守備網を崩してくれる選手が必要となる。彼らがいなければ得点力不足となり、「ポゼッションはすれどゴールは奪えぬ」のチームとなってしまうのだ。

つまり、この日のバイエルンはペップのチームではない。6ゴールを奪ったものの、それはハインケスの遺産に頼ったからこそ出来た事であり、ペップの理想とするサッカーが完成した訳ではない。その証拠に、ペップは後半開始からシステムを4−1−4−1に戻している。
前半だけで5点を奪ったパーフェクトな4−2−3−1を捨て、後半を自身の哲学を完成させるための実験時間としたのだ。やはりゲッツェは中央に入り、共にゴールを決めて暴れまわっていたミュラーとレヴァンドフスキをサイドに回したのだ。
この事を見ても、やはりペップは前半のサッカーに納得していなかったのだろう。しかし、後半はシャビ・アロンソの直接FKが決まっただけで、流れの中から得点は奪えていない。それどころかポルトに攻める隙を与える事にもなった。ペップにとって前半は現実であり、後半は理想だったのだ。