昨シーズン、長期政権でマンチェスター・ユナイテッドの黄金時代を築き上げた名将ファーガソン監督の後継者として同じスコットランド人であるモイーズ監督が指揮を執った。
しかし、シーズンを通して良いパフォーマンスをすることができず、結果は7位、監督は1シーズンで解任された。
堕ちた名門クラブは、名将ファン・ハールに復権を託した。数々の名門クラブで実績を残してきた名将は、2014年ブラジルワールドカップでは決して下馬評が高くなかったオランダ代表を率い、準優勝のアルゼンチンにはPK戦で敗北したが、見事3位という周囲の予想以上の結果を出した。
今回のワールドカップで、ファン・ハール監督は戦術家だという一面が多く見られた。準々決勝のコスタリカ戦では、PK戦の為に決してPKセーブ率が高いわけではなかったGKクルルをシレッセンと交代で途中出場させた。その采配が見事的中し、クルルはPKを2本止め、オランダは準決勝に進出した。また、近代サッカーではあまり見られない5バックを採用したりもして、ファン・ハール監督は現状戦力で勝つにはどうしたら良いか、ということを常に考えている監督であろう。
そして、日本人として気になるのは、香川の去就問題だ。ファン・ハールは現状戦力に満足していないのか、香川を含む10人を放出候補にリストアップした。昨シーズンの主力だったエブラを早々にユベントスに放出し、フェライニやヤングなども放出候補に。香川とアンデルソンはユナイテッドに居場所は無いと報じられている。
私は、ユナイテッドがチャンピオンズリーグで優勝をした2008年にクラブワールドカップの対ガンバ大阪戦をスタジアムで観戦したことがあるが、その試合は私が見た試合の中では1、2を争うほどエキサイトした試合であった。当時のユナイテッドは、クリスティアーノ・ロナウド、テベスなどのワールドクラスの選手を始め、ギグス、スコールズ、ネビルといった長年ユナイテッドを支えたメンバー、まだトップフォームを維持していたファーディナンド、ヴィディッチ、ファン・デル・サールなど、誰が見ても豪華なメンバーであった。当時と比べると、現所属メンバーはかなり見劣りすると感じている。特に最大のライバルであるマンチェスター・シティは豪華なメンバーを揃えているので、ユナイテッドのメンバーが小粒に感じている人も多いであろう。そういう状況だからこそ、ファン・ハールの勝ちに徹する戦術が、ユナイテッドを優勝に導く最大の要素であることは間違いない。そして、ファン・ハールならばユナイテッドを上位に食い込ませることはできるのではないかと思っている。
また、昨シーズン0得点の香川が生き残るためには得点力不足の解消が鍵となるが、ドルトムント時代のように香川を中心としたチームを作らない限り活躍は難しいのではないかと私は考えている。しかし、ファン・ハールは序列の低い香川を活かすチームを作ることはせず、勝つための戦略に香川が適合しなければ放出するといった考えであろう。
そして、香川にとって今シーズンを占うアメリカ遠征でのパフォーマンスが吉とでるか凶と出るか。また、名門クラブは本来の姿を取り戻せるのか。今後の戦いが楽しみである。