“日本化”する上で欠かせないのが、スピードとテクニックで翻弄するドリブラーの7番・レッキーと、相手2ライン間でギャップを突きながらアクセントをつける10番のクルーゼ。彼等2人が攻撃時の軸であり、“新生・サッカールーズ(豪州代表の愛称)”の旗手なのは間違いないです。ケーヒルを最前線に置いているため、彼に向けたハイボールを放り込む策は今ではオプションの選択肢に過ぎません。
そして、際立っているのは何処からでも得点が取れる、という攻撃力。最終戦こそ無得点に終わりましたが、2戦目までで8得点を記録し、さらにその8得点が全員違う選手による得点なのです。それもMFが5得点(ジェディナック、ミリガン、ルオンゴ、マッケイ、トロイ―ジ)でFWが3得点(ケーヒル、クルーゼ、ユーリッチ)というポジションに関係なく取れているのも流動的なパスサッカーを披露出来ている証明となっています。準々決勝で中国との対戦が決まっていますが、韓国戦で主力を温存できている点や開催国のアドバンテージも活かせるので、彼等も準決勝には間違いなく進出してくるでしょう。準決勝では日本との前回大会決勝の再現濃厚ですが、まずはサッカーファンとして彼等のサッカーを楽しんで観るのもアリでしょう。
“リヨン王朝”最後の指揮官アラン・ぺラン 個を活かすチーム作りで中国が首位通過
順位/対戦 | 中国 | ウズベキスタン | サウジアラビア | 北朝鮮 |
---|---|---|---|---|
中国 | – | ○2-1 | ○1-0 | ○2-1 |
ウズベキスタン | ●1-2 | – | ○3-1 | ○1-0 |
サウジアラビア | ●0-1 | ●1-3 | – | ○4-1 |
北朝鮮 | ●1-2 | ●0-1 | ●1-4 | – |
B組は今大会で最も競争力が低く、グループリーグ突破後の準々決勝で豪州と韓国の“2強”と対戦する構図が出来上がっている事もあってスポットライトを当てににくい戦いだったと思います。その中で、2010年の南アフリカW杯出場の北朝鮮が全敗する一方で、2002年の日韓W杯出場、2004年の自国開催のアジアカップ準優勝以来は代表チームの低迷が著しかった“眠れる獅子”中国が3戦全勝で首位通過してきた事はサプライズだった言えます。
中国はフランス人のアラン・ぺラン監督(写真)が昨年より指揮を執っていますが、彼はフランスリーグのオリンピック・リヨンのリーグ7連覇時の監督でした。“リヨン王朝”と言われた2001年から2008年までのリヨンの7連覇ですが、実はこれは4人の監督の下で成し遂げられました。その7連覇目に指揮していたのがぺランでした。ちなみに2~4連覇目は現在オマーン代表監督のポール・ルグエン氏なので、リヨン王朝勢力がアジアに浸透中です。
ぺラン監督の特徴としては現在のレアル・マドリーの最前線で輝くフランス代表FWカリム・ベンゼマや“未完の大器”ハテム・ベナルファといった当時の若手を主軸に抜擢してリーグ優勝を勝ち取った事。今をときめくベンゼマも2007年は若手有望株の1人でしたから。
ただ若手の抜擢というよりも、個のタレントを活かす戦いをする傾向が強かったり、それゆえに選手との対立も多いので長期政権を築く事もありません。リヨンでもリーグ優勝しながら1シーズンで解任されています。ただし、タレントを見極める目利きと、それを活かす術は愚直ながらもシンプルで分かりやすく即興性もあると言えます。
もともと日韓W杯出場した際に率いた名将ボラ・ミルティノビッチも、中国の大型選手のフィジカル強さを活かしたチーム作りで成功していました。現在のぺラン監督もオーソドックスな戦いを植え付け上でボール際の強さを活かし、最前線のFWガオ・リンへボールを集めるというシンプルな戦い方が功を奏していると言えます。
準々決勝では“日本化”したパス&ムーヴを披露する開催国・豪州という好対照なチームとの対戦になりますが、華僑が多い豪州の土地ではホームアドバンテージも利かない支援もあるかもしれません。そうした部分も楽しみにしながら準々決勝を待ちましょう。