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ロベルト・バッジョの衝撃(後編)宇佐美へ届け「戦術を越える選手」に

 地方クラブがどうやって強豪相手に勝つか?組織的なプレーや、戦術の完成度を極限まで上げる事もその方法論の1つかもしれませんが、バッジョや宇佐美のような卓越した個人技を持つ選手を軸にしたチーム作りもまた1つの方法です。

 ただ、もちろん宇佐美にも問題はあります。ハビエル・アギーレ監督時代に1度も日本代表に選出されなかった宇佐美ですが、それは守備意識の低さや走力の不足が原因とされていました。しかし、アギーレはアトレティコ・マドリーの監督時代、アルゼンチン代表FWセルヒオ・アグエロとウルグアイ代表FWディエゴ・フォルランの守備を免除して、2人のフィニッシュに至るまでの個人能力を活かしたチームを作りました。つまり、アギーレは年間20得点を保障するような「個」には自由を与えてくれる指揮官でもあります。

 しかし、宇佐美は所属するガンバ大阪でJ1リーグ・ヤマザキナビスコカップ・天皇杯の3冠を達成したものの、リーグ戦は26試合の出場で10得点に終わりました。この成績で、「結果だけなら選ばれていた」と言うのは間違いです。逆にチームが3冠を達成していなくて20得点以上を記録していれば、宇佐美はアジアカップにも招集されていたのではないでしょうか?代表とクラブで求められる基準が違うというのもバッジョのキャリアを通じて感じた部分でもあります。

 現在はアギーレ退任後に就任したヴァイッド・ハリルホジッチ監督が宇佐美を代表に招集して重用していますが、約束事を守ってプレーする現在の宇佐美のプレーは小さく見えます。おそらく、自陣深くまで戻ってプレーする宇佐美は、「宇佐貴史」か「宇佐耳貴史」という別の選手になっているように見えます。また、体脂肪率の高さを指摘されていますが、いきなり日本にやってきて全く知らない民族の理想の体質を語るハリルホジッチに全てを合わせる必要はありません。かと言って、体脂肪率が一般人と一緒では話にもなりませんが、それが原因で窶れていては何の意味もありません。

 宇佐美の場合、バッジョのように「自分が約束事を忠実にこなすよりも、個人能力を発揮することがチームプレーにつながる」のではないでしょうか?もちろん、そのためには個人のスキル、アイデアをチームのチカラになるように落とし込まないといけません。

 そう考えると消化不良の宇佐美にとって日本代表で活躍するための鍵は、自分の力をより信じ切る事と、周囲への理解を深めるためのコミュニケーションにあると言えるでしょう。

 「イタリアの至宝」に追い付き、追い越せ、「日本の至宝」フォルツァ、宇佐美!!