ポルトはマンマークを敷いているため、チアゴやラームといったゲームメーカーが位置を下げた場合でもオリベルとエレーラが付いていく。これによってチアゴとラームの動きは抑えられるが、このままでは縦パスを通された際にカゼミーロ1枚となってしまい、ピンチになりやすい。
そこでポルトは、エレーラとオリベルが高い位置を取った後のスペースをサイドハーフのクアレスマとブラヒミを中に絞らせてカバーしている。これでバイエルンは縦パスを通すエリアを失い、なかなか前に進む事が出来ない状況となった。
サイドからの攻撃に目を瞑り、中央のケアに人数を割いたロペテギの戦略は見事だった。バイエルンはサイドからのクロス以外に攻め手を失い、決定機をほとんど作れていない。これは第2戦でも継続される事が予想されるため、バイエルンは何か打開策を用意しなければならない。
ペップとしては開始10分での2失点よりも、過去の同僚でもあるロペテギの仕組んできた守備法に頭を悩ませたはずだ。ポルトの守備がバイエルンの「ポゼッションはすれどゴールは奪えぬ」という欠点を炙り出し、ペップが監督職を始めた頃よりの「メッシ依存症」を浮彫にしたのだ。
なぜなら、この状況を打開する簡単な方法が1つあるからだ。現在は負傷離脱しているロッベンとリベリの個人技に頼る事だ。ロッベンとリベリというワールドクラスのドリブラーが両サイドにいれば、ロペテギはこの日のように中央を重点的にカバーする守備を使えない。
少なくともロッベンの対応に2人は割く必要があり、そうなれば中央にスペースを作ってしまう事になる。今回の策略はロッベンとリベリという2大スターが不在だったからこそ成功したものであり、ペップが隠し続けていた得点力不足を露呈する結果となった。そう、ペップはバルサでもバイエルンでも、メッシやロッベンといった個の力が無いとチャンスを生み出せない指揮官なのだ。
☆バイエルンが逆転するためのヒント
ただ、今のバイエルンにロッベンとリベリはいない。逆転でのベスト4を狙うためにも、ホームでの第2戦では最低でも2点を挙げる必要がある。幸い、ポルトが中央を意識しすぎる事によって生まれたボアテングのクロスから、チアゴがアウェイゴールを決めてくれている。
これもバイエルンの狙い通りの攻撃ではなく、ポルトがこの試合で犯した数少ないミスが得点に繋がった形だ。バイエルンはホームの勢いに身を任せて2ゴールを挙げる事も可能かもしれない。ポルトもバイエルンのミスによって3ゴールを挙げた訳で、ポルトが第2戦でミスをしないとも言い切れない。
しかし第1戦と全く同じ流れになる事を考えても、ペップは何か新しい策を考えなければならない。それも翌週の火曜日までという期間限定でだ。
実に難しいミッションだが、第1戦にはヒントがあった。それは後半のポルトの交代策にある。ポルトはオリベル、クアレスマ、ブラヒミの3人を途中交代させているが、この交代策はいずれも疲労を理由としている。オリベルは交代した後半30分の際には10Kmを超える走行距離を記録しており、疲労がピークに来ていたのかもしれない。
クアレスマとブラヒミはサイドと中の両面をケアする事に加え、攻撃時にはカウンターでサイドを駆け上がらなければならず、疲労が蓄積するのは目に見えている。この事から考えても、ポルトは第2戦でも似たような交代策をおこなってくると予想される。
バイエルンはさらにパスワークのテンポを上げ、より彼らを走らせる必要がある。それがポルトを崩す1つのヒントになるだろう。さらに第2戦では、ポルトは累積警告の影響で右サイドバックのダニーロと左サイドバックのA.サンドロの両名を欠く事になる。
サイドで攻守に奮闘していた両名を失う事は痛手であり、サイドをいかに有効利用できるかもポイントとなる。
激戦必至の第2戦、ポルトにとっては苦しい90分となるだろう。ペップも自身の価値を示すため、何かしらの逆転策を考えてくるはずだ。ポルトの大金星ストーリーは折り返し地点を迎えたばかり。予想もつかない終結を見逃してはならない。