当初ペップがアンカーとして起用したラームは、バランス能力と戦術理解度は群を抜いていた。しかし、フィジカルで脆さを露呈するシーンがたびたびあった。さらにラームはサイドバック出身者のため、自分の後方にあるスペースを見る事に慣れていない。
つまりは逆サイドへの展開などに障害が起こり、攻撃がワンサイドに偏りかねない。アロンソの加入はペップのサッカーを大きく変える事となった。加えて、心配された年齢もプラスに作用している。年齢を重ねたアロンソはこれまでの経験と、当初より持ち合わせていた頭脳を活かし、相手がどのスペースを突いてくるかを事前に読んでいる節がある。この動きも地味で目立ちにくいが、相手のクロスボールをアロンソが処理するケースが非常に多い。これは相手の狙いを事前に読み、あらかじめスペースをケアしておかなければ出来ない芸当だ。
1対1の守備やクリアボールに対する対処はもちろん、CBの1歩手前でクロスボールを処理する役割まで担う。まさに完璧なアンカーといえるだろう。
その存在感は今のバイエルンに欠かせないものとなっており、アロンソが欠場したブンデスリーガ第17節マインツ戦では、かなりギリギリの勝負を演じさせられている。これまで複数の選手配置を試してきたペップでも、アロンソのアンカーだけは固定せずにはいられないという事だ。
今季のペップに課せられたタスクは、単純に「全て勝て!」だ。3冠を達成した2年前のハインケス政権時よりも良い成績で3冠を獲得しろという無謀なミッションとなっているのだが、それにはアロンソの活躍が欠かせない。
ブンデスリーガは順当に制する事が出来るだろうが、CLはそう甘くはない。地味な活躍が3冠に繋がる・・・。後半戦のバイエルンは、地味なアロンソに注目してみるのも面白いだろう。