昨季リーグ王者・サンフレッチェ広島で台頭する宮原和也
昨季の明治安田生命J1リーグチャンピオンシップを制したサンフレッチェ広島。直近4シーズンで3度目のリーグ優勝を果たした王者だが、今季は開幕からやや躓いている。昨季は全34試合でリーグ最多の73得点、リーグ最少の30失点で絶対的な強さを見せていたが、公式戦5戦未勝利が続いている。
2月20日に前年度のJ1リーグと天皇杯の王者同士が激突するゼロックス・スーパーカップからシーズンが始まり、見事にこの試合でガンバ大阪を3-1と下して今季最初のタイトルを獲得したが、その後はACL2試合とJ1開幕戦で3連敗を喫してしまい、その後のJ1リーグも名古屋グランパス、湘南ベルマーレを相手に1-1の引き分けと未勝利が続いている。
AFCチャンピオンズリーグに参加しているため、過密日程が続いている。現在はまだまだ手探りの状況だ。Jリーグ最優秀監督賞を史上最多タイの3度受賞している森保一監督は、昨季辺りから常々、「我々には2チーム分の戦力がある」と言ってのけ、今季序盤の5試合でも大幅なメンバーの入れ替えを行っている。
変革の時か?ボランチで台頭し始めた宮原和也 中盤の構成と最終ラインの組み立てが顕著に変化
そんな中、今季を迎えるにあたっての補強で、やや不思議に思うことがあった。昨季JリーグのMVPを獲得したMF青山敏弘は替えが利かない存在ではあるものの、彼のバックアップを高卒ルーキーのMF森島司だけに留めた事だ。ボランチに関してはクラブW杯でMF丸谷拓也が台頭して来たものの、おそらくこれは、DF/MF宮原和也に期待している部分も大きく感じた。
Jリーグ屈指のイケメン選手としても人気の宮原は、高校3年生で飛び級昇格してから今季でプロ4年目。下部組織に所属している頃から“森崎和幸の後継者”と言われながらも、これまでは右ストッパーとして起用されて来た。それが今季はすでにボランチとして3試合連続で先発起用されている。特に青山とボランチを組んだ名古屋戦では、欠場したチーム最年長のMF森崎和の役割を担い、最終ラインから十分にゲームをコントロールしていた。今季は宮原にとって飛躍の時かもしれない。
その名古屋戦の宮原のパフォーマンスについて、「森崎和以上のインパクトを残せなかった」との批評もあるが、あの役割は目立っていたら逆に失敗だろう。実際、FCソウル戦での宮原は目立っていた。悪い意味で。森崎和が昨季のリーグ優秀選手にも選ばれない日本サッカーの悪い部分をここでも散見したように思う。
また、名古屋戦の宮原は正確な技術と的確な判断力によりチームに新たな変化ももたらしていたように見えた。それは宮原が森崎和よりも展開力に乏しいからかもしれないが、彼がボールを持つと隣でサポートに入る左ストッパーの佐々木翔がボールを持ち運びやすいように、相手のプレスを吸収した上でスムーズにパスを配給できる事だ。これにより、名古屋戦での佐々木は幾度も球筋の長く鋭い縦パスや、フィニッシュ直結のロングキラーパスを通し続けた。佐々木の躍動には宮原の貢献も大いにあったのだ。
森崎和も本来はボランチの選手だったが、現在のサンフレッチェのスタイルを定着させたミハイロ・ペトロヴィッチ監督(現・浦和レッズ)が就任してから2年ほどは右ストッパーとして起用されていた。宮原はトップチームでレギュラーとして起用されて来たわけではないが、紅白戦などのトレーニングで右ストッパーを継続的にこなす事から感じた“新たなボランチ像”も見えて来たはずだ。“森崎和幸の後継者”と言わず、“ボランチ・宮原像”を磨いてもらいたい。