写真4:追加タイムでの劇的な同点弾を決めた佐藤。“稀代のオールラウンダー”はこの日、左SBとして出場。by伊賀FCくノ一公式HP
その後、81分に左CKの混戦からINAC神戸DF三宅史織に押し込まれてリードを許したが、くノ一たちは最後まで諦めずに攻め続けた。92分、浅い位置からのFKだったが、大橋実生が蹴った正確なキック。GKの前で長身の佐藤が競り勝ったバックヘッドがゴールに吸い込まれて、2-2。
アディショナルタイムでの劇的な同点直後も攻め合った両チーム。両クラブ間での移籍や人事の関係、両クラブ共同のサポーターの多さもあって友好な関係を築く両者の対決は2-2。見応え満載の好ゲームでのドローは、「願わくば、両チームに勝点3を」とは、この試合を観た人々の総意だっただろう。
この試合の結果で連敗を3でストップした伊賀。順位は9位のままだが、成長の階段を見つけたくノ一達の今後が楽しみだ。尚、次節は全18節中のちょうど折り返し地点となる第9節。伊賀は敵地で4位のマイナビ・ベガルタ仙台レディースと対戦する。
また、INAC神戸はこれで3戦未勝利だが、2位をキープ。次節は勝点6差で独走態勢に入りつつある日テレ・ベレーザとの直接対決が待っている。
図2:『プレナスなでしこリーグ1部2017順位表』
伊賀FCくノ一MF㉕吉武愛実~類まれなサッカーセンスと戦術“眼”(試合後のインタビュー)
写真5:先発2試合目の大卒新人MF吉武。時間の経過と共にボールタッチが増え、チームが盛り返す要因ともなった。by伊賀FCくノ一公式HP
この試合、最初の20分は守備に軸足を置いていたとはいえ、完全にINAC神戸が主導権を握っていた。それでも徐々に盛り返して行けたのは、時間の経過と共に大卒新人のMF吉武愛美が見せた試合の中での成長が要因だろう。
20分過ぎから相手との感覚や間合い、距離感が掴め始めた頃、吉武は上記したような鋭い攻撃2本に絡んだ。それまでは「緊張ばかりしていた」と言うほどだったが、あのワンタッチでの大胆なサイドチェンジから自信を持ち始めたのだろう。
吉武は今季から吉備国際大学Charmeより加入した選手。この日はFKのキッカーも務めるなど、精度の高いキック力が持ち味で、「大きな展開もできる、ウチにはいないタイプ」(野田監督)として期待の選手だ。
下記の通り、途中出場で段階的に出場時間を増やしつつ、前節・長野戦で初先発。この日で2試合連続のフル出場。こうした起用法になっているのは、「大学の卒業式などで本格的なチーム合流が遅れた」(野田監督)ため。コンディションを上げつつ、チームへフィットして来た彼女は現在、試合経験を積みながら、この日も試合の中で成長していく姿が見て取れた。
図2:段階的に出場時間を増やしている吉武愛美
試合後のインタビューでは「緊張しっぱなしで課題だらけでした。全然ダメでした」など、フワフワしたトーンながら自分へのダメ出しばかりをしていたが、プレーのディティールについて尋ねると、別人のようになって話し始めた。きっと彼女は「サッカーをするために生まれた来た人」なのだろう。(類まれなサッカーセンスとボランチに最も必要な戦術眼。その“眼”の部分に注視した以下のショートインタビューをご覧ください。)
吉武:キックが持ち味でサイドチェンジを求められている
―――2試合連続でのフル出場となりましたが、如何でしたか?
(吉武)「全然です。課題だらけです。」
―――30分頃まではかなり緊張されてましたよね?
(吉武)「いえいえ、ずっとです。」
―――でも30分頃に右サイドから凄いサイドチェンジを通して決定機を演出されました。
(吉武)「あれだけです。自分はキックが持ち味でサイドチェンジを求められているので、あの1本だけでは少ないので、もっともっと大きな展開の本数を増やして行けるようにしたいです。」