公式戦22連勝の記録を作っていたレアルが、リーガ17節のバレンシア戦、その3日後におこなわれた国王杯アトレティコ・マドリー戦でまさかの連敗を喫した。偉大な記録とは裏腹に、レアルには改善すべき問題点がいくつかある。
バレンシアとアトレティコには、レアルの数少ない欠点を突かれる格好となった。今回はバレンシアの戦い方から、レアルとの戦い方を伝授しよう!
☆BBCトリオはマンマークで抑えよ!
レアルが不動の4−1−4−1なのに対し、バレンシアは3−5−2.リーガでは珍しい3バックを採用する形となった。バレンシアのヌノ監督は試合前から緻密に策を練っており、結果的にはそれが当たったわけだ。この策は2014W杯でも流行した形と似ている。
その形とは、3バック&マンマークだ。ゾーンで守る現代においてマンマークは愚策と考えられがちだが、2014W杯以降マンマークとゾーンの併用にスポットが当たっている。今回のバレンシアも同じだ。
ヌノが仕掛けた策は主に2つ。1つ目の目玉策が、レアルの3トップを3枚のCBで徹底マークする事だ。左のロナウドにムスタフィ、右のベイルにオルバン、真ん中のベンゼマにはオタメンディが張り付き、自由を許さない。レアルの得点源は3トップのBBCトリオ(ベンゼマ、ベイル、ロナウド)であり、ここを抑えられると苦しくなる。
中盤のイスコとハメスにもインサイドハーフのアンドレ・ゴメスとパレホがマンマークにつき、組み立ての段階からレアルを苦しめにかかった。
この策は当たり、レアルはほとんどチャンスを作る事が出来なかった。レアルはリーグ戦で挙げた59ゴールのうち、実に41ゴールをBBCトリオで奪っている。ロナウドが26得点と爆発している事も関係しているが、ここを抑えられるとフィニッシュまで辿り着く事が出来ない。
さらに攻撃の形はカウンターが多く、バレンシアのように守備ブロックを固めた相手を苦手としている。中堅〜下位クラブであれば地力の差でねじ伏せられるが、バレンシアやアトレティコのように準強豪と呼べるレベルになってくると個の力だけでは崩せない。
レアルの得点でカウンターが多いのも、BBCトリオの特性が大きく関わっている。チャンスメイクからフィニッシュまで全てをこなすロナウドとベイルだが、共に広いスペースがある状況でのプレーを好むタイプだ。狭いスペースを細かく抜けていくのではなく、広大なスペースをスピード勝負で崩すのが彼らの特徴なのだ。
そのため、守備ブロックを固められた状態ではドリブルを繰り出す事が出来ない。今回のバレンシアのようにマンマークにつかれるとスペースが無くなり、得意のドリブルは影を潜めてしまう。個人の能力が優れているレアルにマンマーク勝負は危険と感じるかもしれないが、個の力に頼るレアルにこそマンマークで対応すべきなのだ。
では、レアルはこの状況をどのように打開するのか。
1つは、3トップのポジションチェンジ。中央のベンゼマがサイドに流れ、ロナウドやベイルを中央に入れてくる。ベンゼマはキープ力に秀でているため、サイドで起点となりやすい。ロナウドやベイルが良い形でボールに触れない時には、このやり方を使う事が多い。
当然ヌノもそこを理解しており、対策は取っていた。その対策こそが2つ目の策とも呼べるエンツォ・ペレスのアンカー起用だ。
サイドに流れたベンゼマには予定通りオタメンディが付いていき、前を向かせない。そしてオタメンディが抜けた後のスペースにはアンカーからペレスが降りてくる。マンマークの欠点でもあるスペースが出来やすい部分を、ゾーンディフェンスを使って巧みにケアしてみせた。
中盤から最終ラインの選手にはそれぞれマークの対象がいたが、アンカーのペレスには特定のマーカーがいなかった。彼に課せられたタスクはバイタルエリアからPAに出来るスペースをケアする事。つまり彼ののみがゾーンディフェンスをおこなっていた訳だ。このマンマークとゾーンの併用により、レアルの攻撃を抑え込む事に成功した。