スタイルを信じ続けた広島の総合力による大逆転勝利
【明治安田生命Jリーグチャンピオンシップ決勝・第1戦】
ガンバ大阪2―3サンフレッチェ広島
<得点者>
[ガンバ大阪]長沢(60分)、今野(81分)
[サンフレッチェ広島]ドウグラス(80分)、佐々木(91分)、柏(96分)
準決勝で延長戦にもつれたG大阪 ”広島スタイル”対策を分析できた広島
【チーム状況と展望】
今季のリーグ戦年間3位によりチャンピオンシップに出場してきたG大阪は、準決勝で第1ステージの覇者にして年間順位2位の浦和レッズとアウェイで対戦。浦和に23本のシュートを浴びて押し込まれる展開ながら、延長後半終了間際のDF丹羽大輝による前代未聞のバックループパスによる“オウンゴール未遂事件”で浦和の集中力を緩和させ、そこからののカウンターで仕留めて勝利。しかし、広島がリーグ戦の最終節から中9日で迎えるのに対して、3日で迎える上に90分だけでなく延長戦も戦った上での疲労の色は濃いはず。コンディション面では著しく不利か?どこの時間帯で勝負を賭けるか?がポイントになる。その部分も含めて頼り過ぎるほどの絶対的なFWパトリックはベンチスタートとなり、長身FW長沢駿が先発に抜擢されている。
一方、第2ステージの覇者にして年間順位1位の広島は試合勘が心配な部分があるものの、G大阪の疲労以上にプラスアルファになりそうなのが、浦和に元広島の監督と選手が多く、同じ可変型フォーメーション<3-4-2-1>を使うため、G大阪の”広島スタイル”への対策の全貌がスカウティング出来ること。G大阪は広島や3バックの相手との対戦に際しては、3ボランチ気味の<4-3-1-2>を組む変則布陣で挑んで来ていたため、その出方を探る事が出来たのは大きなプラスだと想定される。
パトリックをベンチに置いた以外はベストメンバーのG大阪に対して、広島もベストメンバー。約1カ月前にこのG大阪のホーム・万博記念競技場で対戦した第2ステージ第16節の際には0-2とアウェイの広島が結果・内容共に完勝している。また、その試合で負傷交代したDF水本裕貴が復帰。この試合ではベンチ入りを果たしているが、DF佐々木翔が優勝を決めた第2ステージ最終節に続いて先発している。
前半は堅い入りもホームのG大阪が優勢
試合の方はホーム&アウェイ方式の2試合で優勝が決まるレギュレーション上、両チーム共に堅い立ち上がりに。ただ、ホームのG大阪が広島特有の後方でのビルドアップを妨害すべく猛烈なプレスの連動でボールを奪う場面があった。特に広島の主将であり、司令塔となるMF青山敏弘への密着マークがしつこく、この戦略を選択する上での自G大阪・長谷川健太監督の長沢の抜擢であった事が顕著に出ていた。
加えて、この日はトップ下起用の宇佐美貴史がバイタルエリアでボールを受けて起点となった。これにより高い位置での仕掛けが可能になったG大阪が序盤に幾度か決定機を作ったのだが、阿部浩之や宇佐美は決めきれず。その宇佐美のプレーは本来のフィニッシャーというよりは、この日もベンチ外となった“万博のファンタジフタ”MF二川孝広のようなパス(クロス含む)やワンタッチプレーなどチャンスメイクに比重が向いていた。また、自身が得意とする左サイドへ流れる傾向の強い偏重した動きも広島に読まれ始めた。
広島はそんな激しいプレッシングをするG大阪相手に苦しんでいた。シュートすら放てない序盤だったが、プレスの局面に人数をかける陣形上、逆サイドにスペースが出来る事を察知しながら、プレスを外してはサイドチェンジを有効活用。17分に青山からのロングボールを収めた左WB清水航平がフリーで切り返してチーム初シュートを放つと、直後にはDF塩谷司も攻撃参加して分厚い攻撃。右WBのミハイロ・ミキッチへ。Jリーグ屈指の“サイド職人”のクロアチア人から供給された専売特許のピンポイントクロスがゴール前フリーのFW佐藤寿人へ。しかし、佐藤がヘッドは逸れてしまい、均衡を破れない。
その後はホームのG大阪がボールを持ちながら試合を運ぶ場面が多かったものの、アウェイで慎重に試合を進めたい広島とアウェイゴールは与えたくないG大阪の思惑が一致した部分は共に、「前半は0-0で」という心の声が聞こえたかのような堅い展開に終始。スコアレスで前半を折り返したとはいえ、20分頃までの両者の動きを考えれば、後半はスコアが動けば何かが起きそうな気配がしていた。