また、2部のクラブからはなでしこジャパンへ選出される代表選手が昨年から続出している。すでに代表に定着したノジマステラ神奈川相模原のDF高木ひかり(今季はチームでボランチ担当)は昨年までチームが2部所属だった。昨季2部・7位と中下位だったASハリマ・アルビオンのFW千葉園子も昨年から代表へ定着しつつある。
4月9日に行われた『キリンチャレンジカップ2017~熊本地震復興支援マッチ がんばるばい熊本~』VSコスタリカ戦の代表メンバーには千葉は落選したものの、代わりに愛媛FCレディースのFW上野真実とFW大矢歩が初めて招集されて代表デビューに至り、上野はいきなりアシストも記録するほどの活躍を披露した。
そして、昨季初めて1部昇格を果たしたAC長野パルセイロレディースが、いきなり2位のINAC神戸レオネッサと同勝点の3位へと大躍進。今季も1部初昇格のノジマが開幕5戦で2勝2分1敗の4位と大健闘しているのも印象的だ。
このように、近年のなでしこリーグ2部の競争力の向上はチームとしても選手個々の能力をとっても明らかで、1部常連だった湯郷や高槻が1年での1部復帰どころか、一気にチャレンジリーグ(実質3部)降格もありえるほど熾烈な競争が勃発しているのだ。
宮間退団と降格を経て亘新監督兼任GMの新たなチーム作り
そんな実力伯仲で熾烈な争いが繰り広げられている2部で今季を戦っている岡山湯郷Belleは、上記した問題が表面化し、昨季限りで前日本代表主将MF宮間あやを筆頭に多くの選手がチームを退団し、残ったのは僅かに6選手のみ。大量19人の新加入選手と共に新たなチームとしてシーズンを戦っている。
伊賀フットボールクラブくノ一から4選手とスペランツァ大阪高槻からは5選手が新加入しているので、現チームは『湯郷+伊賀+高槻の混合チーム』と言えるかもしれない。
もちろん、問題が表面化して降格したチームに有力な選手が加入する事も少なく、昨年12月からゼネラルマネージャー兼任で新監督に就任した亘崇詞氏も明かすように、「他チームで出番が少なかった選手や、戦力外になった選手、行先がなかった選手も多い」のが現実。
それでも亘監督が日テレ・ベレーザのコーチ時代から指導していて、氏が率いた中国のチームでもプレーした元日本代表FW木龍七瀬や、2012年のFIFA-U20W杯で主将を務め、日本史上最高の3位に貢献したMF藤田のぞみも加入した。
CB斎藤の緊急補強で固まった屋台骨
しかし、この日の敗戦で開幕6戦を1勝1分の4敗で10チーム中の8位と低迷している。特に4戦目までに13失点を喫していた守備陣の弱体化が深刻だった。
この状況に、クラブは4月17日にINAC神戸からDF斎藤夏美を緊急補強。斎藤はINAC神戸では出番に恵まれなかったが、筆者も何度か見学したINACのトレーニングでは168cmの長身と身体能力の高さだけでなく、パス回しのメニューでも上手さを発揮していた選手で、誰もが「なぜ出番がないのか?」と不思議に思うような実力派のセンターバックだ。
彼女は現在もINAC神戸を率いる松田岳夫監督が現・ちふれASエルフェン埼玉時代に指導しており、INAC神戸に引き連れていった選手。出場機会を求めて、急遽シーズン中の移籍を決断した。
斎藤は加入が決まった週の第5節・愛媛L戦(1-1の引き分け)でいきなり先発出場し、チームの3連敗を止めた。