ポルトガルリーグの名門、スポルティング・リスボンで苦闘していた男が、少しずつその実力は発揮する術を身につけ始めた。
カップ戦での3アシストと、出場した試合でしっかりと結果を出すと、その後の試合ではゴールを量産し、チームのジョーカーとして機能しつつある。
シーズン開幕前の練習試合では得点を量産しており、リーグ戦でも出場が期待されたものの、監督の判断はNOだった。
その理由は、『前線からの守備が出来ない』というものだった。
特に欧州ではよほど『スペシャル』な存在でない限り、FWでも守備の能力を求められる。
柏時代にはしていなかったものが、ポルトガルに行ったからといってすぐに出来る訳ではない。そういう意味では、この判断は妥当であったといえるだろう。
だが、それで腐らずに練習で必死にそれを身につけようとしたのが良かったのだろう。
そうでなければカップ戦とはいえ出場機会を与えれることなどないのだ。
そして、そこでしっかりと結果を出した。得点にしてもFKやPKからであったが、それも練習で目を見張るものがあったからこそ、与えられたということを忘れてはならないだろう。
そして流れから美しいゴールを叩き込んだことで、止まったボールならばゴールできる、などと言われたことを自力で払拭してみせた。
マルコ・シウバという若き名将の元で自身の弱点を克服し、成長を遂げた田中順也。
次なる目的はスタメンの奪取と、安定したパフォーマンスを維持することだろう。彼の挑戦はまだ始まったばかりだ。
雌伏の時を終え、大きく羽ばたこうとする彼の前途に、栄光が待っていることを願って止まない。