試合の方は序盤から日本が前から圧力をかけて押し込み、セットプレーも含めてシュートも多く、今大会の試合内容では最も良い試合の入り方をしていました。
しかし、その最初の圧力も弱まった際には中国に反撃を許す機会も訪れ、10分には右サイドの高い位置からのスローインをぺナルティエリアへ簡単に繋がれ、中国のエースFWガオ・リンを経由して落としたボールがフリーのウー・レイへ。ぺナルティアーク付近から右足ダイレクトで一閃したシュートはブロックに入った丹羽の手に当たりながらも威力が勝ってゴールに突き刺さり中国が先制。
先制点を許した日本は最終ラインが高い位置を保って攻撃的にプレーしようとするものの、攻撃陣が軽いプレーでボールを奪われる事でカウンターの脅威にさらされる事に。27分にはウー・レイが日本の最終ラインの裏を取って抜け出し、GK東口と1対1になる場面も。ここは東口の対応と、この日ピッチに立った両チームの中で最も光り輝いていた米倉の懸命な戻りで防ぎました。
守備陣は攻守両面でチームを盛り立てようとして奮闘していても、攻撃陣が応えてくれない辛抱の試合展開となった日本は41分、守備陣が攻撃面でも大きな仕事を披露して同点に追いつきます。ハーフウェイライン付近でCB槙野がボールを持つと、左サイド前方に大きく拡がるスペースに左SB米倉が凄まじい勢いの加速力を伴って突っ込み、槙野からも絶妙なスルーパスが供給される。そのスピード感を維持したままダイレクトでゴール前にグランダーを蹴り込んだ米倉のクロスに、武藤が北朝鮮戦のように飛び込むように走り込みながら合わせたシュートが決まって1-1の同点で前半を終了。
個々で奮闘する選手がいたものの、指揮官の残念な采配で未勝利の最下位
両チーム選手交代なしでスタートした後半も日本は米倉のフィニッシュにまで絡むという“新たなSB像”を提唱するような猛アピールぶりを筆頭に、槙野の積極的なビルドアップや、山口と遠藤のバランス感覚を保ちながらの飛び出しなど守備陣の攻撃参加から攻勢を強めたものの、前線が決めきれないまま体力を消耗。
70分には前線からのプレスがハマり、山口のヒールパスという意外性も絡めた絡みから武藤が抜け出してGKと1対1の状況も作ったものの、得点はならず。
ただ、これまで3試合連続先発起用されながらボールに絡めなかったり、技術面の不足を露呈していた永井が攻守でスピードを活かしてチャンスメイクし始めていただけに、74分に武藤、83分に永井をベンチに下げるハリルホジッチ監督の交代策が残念でならなかった試合終盤。
途中出場でピッチに立ったMF柴崎岳、FW浅野拓磨はインパクトを残せずに決定機すら作れなくなり、最後は「1-1でもどうでもいい」ような日本に対して、勝たないと優勝の可能性がない中国が焦ってロングボールをは放りこみ、またしても「観るに値しない試合」となって1-1のまま試合終了。日本は東アジア選手権時代から始まる同大会で初めて未勝利に終わり、初めて最下位という残念すぎる結果に終わりました。
確かに両ゴール前を行き来する激しい攻防の試合はインテンシティ(プレー強度)の高い試合と言えたものの、それは「眠れる獅子」と呼ばれる中国が体格で勝るために、相手の土俵で勝負したような印象もあり。
また、それらを形成していたのは3試合連続でフル出場したCB森重真人&槙野、ボランチの山口&遠藤(遠藤は2試合は右SB起用)による連携であって、攻撃陣に武藤以外に新たな存在感を見せる選手が出てこないもどかしい試合・大会のまま終わりました。
W杯予選のシンガポール戦から始まり、アジア相手の公式戦4試合で未勝利や、今大会の最下位に終わったのも、海外組が集中する「真の日本代表」による攻撃陣に国内組は著しく劣る事、Jリーグのクラブがパスサッカーをしなくなって来た事からクオリティの低さなどが明らかになるなど、Jリーグが国際競争力に乏しく、結果以上に危機的状況を感じざるをえない大会となってしまいました。
【選手採点&寸評:独断MOMは米倉】
選手 | 採点 | 一言 |
---|---|---|
GK東口順昭 | 6.5 | 代表選出から4年でデビュー。失点覚悟の大ピンチを止めるなど存在感は見せたが、西川には劣る。 |
DF丹羽大輝 | 5.5 | 本職ではないSB起用ながら奮闘も、失点の場面で手で止めにいく。退場になっていたら代表デビューから10分で、という不名誉な記録を樹立するところ。 |
DF森重真人 | 6.0 | アジアレベルとはいえ、強さを発揮できるようになったものの、主将してプレーした3試合を通して成長を見せたのは槙野との連携くらい。 |
DF槙野智章 | 6.5 | キャプテンマークを巻かなくてもリーダーシップを取る姿勢、少なくとも気迫では誰にも負けず。時間が少ない中で相互理解を深める姿勢は監督も見習うべき。 |
DF米倉恒貴 | 7.0 | 涼しそうな外見とは違って、胸を熱くするプレーの数々。監督の指示を守ろうとして小さくまとまる傾向の多い”Jリーグ選抜”にあっては凄まじい積極性。 |
MF遠藤航 | 5.5 | ミスもあったが、ボランチでも機能できる技術・フィジカル・柔軟性を見せる。「日本のフィリップ・ラーム」として、グアルディオラに紹介VTRを送ろう。 |
MF山口蛍 | 6.0 | MVPを獲得した前回大会同様に幅広い動きにより今後の代表での定位置争いにも加わっていく存在となったはず。大怪我からの復活を確認できただけでも収穫。 |
MF武藤雄樹(74分まで出場) | 6.5 | 貴重なゴールを決めて大会得点王。ベガルタ仙台の準レギュラーから代表でも貴重な戦力にまで上り詰める激動の年となっている彼の今後は楽しみ。 |
→MF柴崎岳(74分から出場) | 5.5 | やはり怪我の影響か?適正ポジションすら見極められないままに終了。期待がかかる選手だが、今大会の出来からすれば代表から外されるべき出来。 |
FW永井謙佑(83分まで出場) | 5.5 | やっと持ち味を出し始めた頃にベンチに下げられる。監督の期待がどこにあるのかハッキリしないようでは・・・。右サイドに適正があるとも思えない。 |
→FW浅野拓磨(83分から出場) | – | 短時間出場のため採点不可。永井同様にスピード系は右サイド起用なのか?今後はプレー範囲を拡げないとスーパーサブ止まりである事も事実。 |
FW宇佐美貴史 | 5.0 | 前半はクロスバー直撃の鋭いシュートも披露するなど見せ場は作っていたが、運動量が著しく落ちた後半はベテランを通り越して”OB選手化”。ポジションに拘る姿勢も捨てないといけない。 |
FW川又堅碁(61分まで出場) | 5.5 | パワープレー要員のような捉え方により持ち味出せず。そもそもポストプレーヤーではなく、インザーギのようなピンポイントで合わせるタイプだが。 |
→FW興梠慎三(61分から出場) | 6.0 | 前線でタメを作れる持ち味は発揮。しかし、連携プレーでしか見せ場がないFWでは厳しいといわざるをえないのも事実。本人の言葉通り、「代表に縁がない」。 |