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アジアのトレンドは”日本化” テクニックとスピード重視の強豪国
面白いのは敵対視しているとはいえ、その豪州を始めとして韓国や中東といったアジアの“列強国”が、前回王者の日本を“アジアのバルセロナ”と評したように、アジア全体に日本のサッカーが知れ渡り、今では日本のサッカーを取り入れようと着手していることです。
豪州は身体能力の高さを活かしたパワープレーの強さを活かし、韓国は運動量と競り合いの強さを活かすロングボールで、中東勢も自陣に引いてのカウンターで日本を脅かして来たわけですが、それが今大会を迎える2年ほど前から変化。アジア全体を通して日本サッカーの技術やアイデアを駆使したサッカーを取り入れ、“日本化”する事がアジアでのトレントとなっている傾向があるのです。
W杯惨敗も、世代交代を機にスタイル変更 現在の豪州・韓国・イラクのサッカーが興味深い!!
日本を含めて、昨年のブラジルW杯に参加したアジア勢(日本・韓国・豪州・イラン)は4ヶ国ともに未勝利で敗退。4ヶ国全体で3分9敗という結果にアジアサッカーの限界を感じさせられました。
しかし、豪州はブラジルW杯予選突破後に、予選中も世代交代が進まずに試合内容も芳しくないホルガ―・オジェック監督を解任。国内リーグ優勝などで名を上げた新進気鋭のアンジ・ポステルグル監督を就任させ、国内リーグの有望な若手選手を発掘させて来ました。
ブラジルW杯のグループリーグで前回王者のスペインやオランダ、チリという奇跡が起きても勝てないような強豪国が相手とあって、本大会にも若手中心の新チームで挑みました。結果は3戦全敗でしたが、大会3位と躍進したオランダ相手に1度は勝ち越す末の2-3の逆転負けという壮絶なゲームをやってのけたり、走力王者・チリにも走り負けないアグレッシヴな姿勢を貫いた豪州はグループリーグ3試合のデータでは「走行距離が参加32ヶ国中でトップ」を記録。惨敗に終わったアジア勢で最も印象を残したチームだったとも言えます。
その中でも、FWマシュー・レッキーはスピードとテクニックを武器にチャンスメイクから最終局面での打開力まで発揮してブレイク。ドイツの強豪であるバイヤー・レヴァークーゼンに所属するFWロビー・クルーズは相手2ライン間で意表をつくアイデア溢れるプレーができる10番の選手。この2選手の台頭により、従来のパワーサッカーだけでなく、“日本化”したようなショートパスを繋ぎながら試合の主導権を握る戦いを見せるようになりました。前述したオランダ戦や、昨年11月の日本戦でもそれは証明されていたと思います。ただし、パワープレイを捨てたわけではなく、最前線には“日本キラー”のケイヒルも開幕戦でゴールを記録するなど健在。
同様に韓国も世代交代をしながら、彼等の場合はJリーグ経験者を軸に据える事で“日本化”を図っているような気がします。アジアカップ登録メンバーの半分がJリーグに所属しているか、元Jリーガーかというのは日本のサッカーファンにとっても興味深い事と、永遠のライヴァルのはずなのに応援したくなる要素を含む不思議な魅力に満ちた韓国も面白い。韓国サッカー協会が推進する育成プログラムも花開いています。その1つである海外クラブのユース組織への留学システムでドイツ1部リーグのハンブルクへ留学して頭角を現し、ハンブルクのトップチームでもシーズン2桁ゴールを記録した現在22歳のFWソン・フンミンはアジア最高の若手アタッカーでしょう。前述の豪州のFWクルーゼは同クラブで控えですが、ソン・フンミンはエース格を担っています。Jリーグでプレーしたチョ・ヨンチョルとイ・グノを両方足したようなスピードと突破力、決定力は今大会ナンバーワンかもしれません。ただし、毎年のように代表監督の交代が相次いでいるのが難点ですが・・・。
そして、当コラムで何度も押しているのがイラク。2013年のU20W杯でベスト4進出を果たしたのを皮切りに昨年はU22アジアカップでも優勝。近年の下部年代での国際大会で確固たる成績を収め、“アジアのギャレス・ベイル”とも言われるDFアリ・アドナンのような強力な個を備えたタレントが揃っています。近年のW杯予選では東アジア勢に出場枠を独占される傾向があった中東勢の中ではいち早く組織的な戦いを見せるようになってますが、意外と中東勢に弱いのはカウンター1発でやられる悪い部分での“日本化”もあるのかもしれません。
明らかな流れが決まるアジアの覇権 日本のアジア征服の時代が続くのか?
最後に、アジアカップを楽しむ上で面白いのは過去の優勝国を並べると明確な勢力図が出来上がる事です。
それは今回でアジアカップは16回目の開催ですが、優勝経験国は7ヶ国もありながら連覇が多い事。下記に優勝国を表にしましたが、1956年に初開催されてから韓国が2連覇し、1968年大会からはイランが3連覇。最近では1984年大会から4大会中3大会をサウジアラビアが、初の日本開催となった1992年の広島大会から6大会で4回優勝の日本などなど、1度優勝したら歴史が続くようになっているのです。
現在はJリーグ開幕前年の初優勝から日本サッカーの飛躍の歴史のようになっているアジアカップですが、4年に1度の祭典とは言えないながらも、このアジア征服を続ける価値はそうした意味でも大きいのでしょう。
開催年 | 優勝国 |
---|---|
1956 | 韓国 |
1960 | 韓国 |
1964 | イスラエル |
1968 | イラン |
1972 | イラン |
1976 | イラン |
1980 | クウェート |
1984 | サウジアラビア |
1988 | サウジアラビア |
1992 | 日本 |
1996 | サウジアラビア |
2000 | 日本 |
2004 | 日本 |
2007 | イラク |
2011 | 日本 |