ペレス会長は2度目の会長就任の際に、ヴェンゲル監督を新指揮官候補に挙げていた。おそらく、それはアーセナルでのジダネス&パボネス計画の成功を評価していたからだろう。その時、実際にマドリー側からの接触を認めていたヴェンゲル監督は力強く言い切った。「今、このチームを去るのは裏切り行為だ」、と。だから、筆者には言いたい事がある。
今季もアーセナルの無冠が濃厚となった時、「アーセン、良い思い出をありがとう。でも、さよならを言う時だ」や、「変化の時だ。ヴェンゲル解任」といったお馴染みの横断幕を掲げたサポーター。または監督交代を後押しするような流れについてだ。
2006年の新スタジアム移転を機に、アーセナルはチーム強化に十分な投資ができる余裕がなかった。それでもヴェンゲル監督はアーセナルを裏切らなかった。セスク・ファブレガスやサミル・ナスリ、ロビン・ファン・ペルシーといった看板選手がチームを去っても、ヴェンゲルは今もベンチで指揮を執り続けている。ヴェンゲルが裏切らなかったのだから、サポーターもヴェンゲルを裏切るべきではない。少なくとも現行契約が満了する来季いっぱいまでは信じるべきだ。
花粉症の季節は終わったが、未だに筆者のアーセナル病が治まる気配はない。そもそも花粉症や風邪、万病に利く特効薬はこの世には存在しない。アーセナル病患者への最高の処方箋とは、アーセナルの試合を観る事なのだろう。“勝つ”という表現を入れないのも・・・ご理解いただきたい。
現在66歳のヴェンゲル監督は未だに青春真っ盛りの理想を追い求めるロマンティストだ。いや、“中2病”とも言える。彼にとってもその症状への適切な処方箋とは、アーセナルの試合を観る事なのだろう。