かつてゲリー=リネカーというイングランドの英雄の一人に数えられていたかたが、『ドイツのサッカーは、形にこだわらず、とにかく速い』などと言っていましたが、その通りで、ドイツのサッカーはフィジカルと合理性を優先させます。
ゲームを作るだ、テクニックがどうだ、は二の次で、こういったサッカーが好きか嫌いかはともかくとして、この試合はそういったところが存分に味わえるものでした。
首位をキープ出来るかどうかがかかわっていたこの試合は、スコアレスドローとなり、勝ち点は両チーム共に1となりましたが、恐らく、そんな展開を予想されたかたも多いのではないでしょうか?
バイエルンミュンヘンは、自陣のペナルティーエリア付近に8人もの選手がおり、攻撃はボールを奪ってからのカウンターが多く観られました。得点は出来ませんでしたが、とても速い攻撃を繰り出しており、この速さを生み出すフィジカルの強さが、ドイツサッカーの信条でもあります。ドイツは空中戦も強いですが、フィジカルとは、何も身体のぶつけ合いだけを言うのではないのです。
こういった試合になった要因の一つが、ボルシアMGにあり、同チームは、ある程度の人数をかけた攻撃を繰り出しており、これがバイエルンミュンヘンのゴール前に壁の如くにそびえるDFを崩す最良の選択と思っていたのかもしれません。
反対に、攻撃に人数をかけて来ないバイエルン・ミュンヘンですから、DFに人数をかける必要がないのです。
現在では、多くの有名選手がプレイしているブンデスリーガですが、こういったことから、巧さが信条の選手はあまり結果を出せておらず、苦労しているようです。
これは余談で、日本の場合にはどうだか分かりませんが、海外のクラブでは、選手の基礎体力、たとえば走力や筋力などの値に、一定のランクを設けており、選手を買ったときに、その発達具合に応じて、前所属チームにお金が入る制度があります。
理由は、巧さを計るものさしはありませんが、数値化出来る基礎体力は計ることが出来るからです。
ですから、若い選手のフィジカルを何とか引き上げて、有力チームに売るといったことを専門としているクラブもあるのです。
こういったことから、まずフィジカルが重視されるのは必然なのです。
上を表す好例として、日本でもかつてこんなことがありました。
とある選手が、レアルマドリードから移籍の申し出を受けていたのですが、主な条件として、移籍金は3億円。W杯に出場すること。といったものがありました。
この3億円という金額は、スター選手に着く値段としては微々たるものですので、チーム側が渋り、結局のところ、W杯メンバーからも落選しました。
当時を知る日本人の多くが落胆したことでしょうが、この頃のサッカー雑誌には、フィジカル寄りの選手が、それとなしにその選手を叩いている記事が載っており、彼らの言い分は、『チームの潰れ役の自分たちの給料が、何も出来ない選手の給料より低いことに納得がいかない』といったもので、的になっていた選手は次のW杯で見事デビューをしたのですが、まだまだフィジカル的には脆く、彼を助ける選手をDHに一人置かなければなりませんでした。
その選手の名誉の為に記せば、スコットランドに渡った彼は、いつしかフィジカルでも負けなくなり、鮮やかなテクニックを多用したプレイは、ダイレクトプレイに変わっていきました。
2010年のW杯では、自身が作り上げたチームに居場所がなくなったわけですが、岡崎の斜めに走る動き、長友のオーバーラップのタイミング、内田のプレイスタイルなど、とても大きな功績を残しているのです。
そして、実に12年の間、代表に名を連ねていたのです。(当落線上の時期も含む)
強いチームは皆、こういった功績とフィジカルを大事にします。