マンチェスター・ユナイテッドと優勝回数で並んでいたアーセナルは大会単独トップの12回目の優勝。監督としても6度目のFAカップ優勝を果たしたアーセナルのヴェンゲル監督。これで監督としての優勝回数では共に5回で並んでいたサー・アレックス・ファーガソン監督を抜いて歴代トップタイになりました。(元アストンヴィラのジョージ・ラムジー監督が1884年~1926年の就任期間に6度優勝)
今季の欧州サッカーシーンでは同じプレミアリーグのリヴァプールからウルグアイ代表FWルイス・スアレスがスペインのバルセロナへ引き抜かれて低迷。代役FWたちが結果を出せない中、システムを<3-4-2-1>にして2列目のタレントを多く起用して13戦無敗と持ち直したものの、結局は昨年は最終節まで優勝を争ったチームが6位フィニッシュ。ドイツでもここ4年間はトップ2を維持していたドルトムントがポーランド代表FWロベルト・レヴァンドフスキが同じドイツのバイエルン・ミュンヘンへ引き抜かれてFWを固定できず、前半戦をなんと最下位で折り返す非常事態に。後半戦は盛り返して7位で終えて面目は保ったものの、共に前年の国内リーグ得点王を引き抜かれたチームが低迷しました。昨季はウェールズ代表FWギャレス・ベイルをレアル・マドリーに引き抜かれたトッテナム・ホットスパーも低迷しました。
トッテナムは監督交代を繰り返してますが、リヴァプールのブレンダン・ロジャーズ監督も、ドルトムントのユルゲン・クロップ監督も手腕を称えられる指揮官です。低迷の責任を彼等が受ける度合いはそれほど大きくはありません。情状酌量の余地がありますし、共にクラブを高いレベルに押し戻した功績もあります。ロジャーズは3年、クロップは7年と安定してチームを任せられている優秀な監督ですが、それでも彼等はチャンピオンズリーグの出場権を失いました。
それを思うと、アーセナルは2007年に4度のプレミアリーグ得点王を獲得したフランス代表FWティエリー・アンリをバルセロナへ、2009年にはトーゴ代表FWエマニュエル・アデバイヨルを同じプレミアのマンチェスター・シティに、2012年には前年のプレミアリーグ得点王のオランダ代表FWロビン・ファンペルシーをマンチェスター・ユナイテッドに、と僅か5年間でエースFWを3人も引き抜かれています。それでもヴェンゲル監督はリーグ戦で4位以下に落ちてチャンピオンズリーグ出場権を逃すような失敗は1度もしていません。それも彼等の売却益以上の額を使って即戦力でワールドクラスと言えるほどのFWを獲得して来たわけでもなく、2006年にオープンした現・ホームスタジアムであるエミレーツスタジアムの建設資金の借金返済も継続しながらのチーム作りで来季は18年連続でチャンピオンズリーグに出場します。
やっと8年の無冠に終止符を打ち、国内カップとはいえ2年連続での主要タイトル獲得。お忘れかもしれませんが、開幕前のコミュニティシールド(プレミアリーグ王者とFAカップ王者の対戦)で勝利しているため今季は2冠でもあります。昨季はエジル、今季はサンチェスとビッグネームの獲得も出来るようになりました。
どれもこれもヴェンゲル監督の功績だと思います。これだけ面白いサッカーを披露した上で決して“失敗”はしないアーセナルの魅力を作るのは、やはりヴェンゲル監督なのだ、とアーセナルの試合だけでなく他クラブの苦戦を以って改めて感じたシーズンでもありましたね。
ヴェンゲル監督、20年目となる来季も期待させてもらいます。裏切られても大丈夫です。アーセナルらしいサッカーを魅せ続けて下さい。また現地まで足を運ばせてもらいますね☆