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【図解】アーセナル戦勝利も、綱渡りのファン・ハール

2014W杯を最後にオランダ代表監督の座を降りたルイス・ファン・ハールは、ユナイテッド監督就任時にオランダ代表で使用していた3バックを持ち込むと宣言していた。ゾーンディフェンスが主流となった現代で、ファン・ハールの考える3バックはマンマークが基本となる。

その珍しさを武器にW杯を勝ち上がったが、ユナイテッドでは結果が出なかった。

1度は4バックなどに戻したりもしたユナイテッドだが、強豪・アーセナル戦でまたも3バックにシフトした。2-0の勝利はファン・ハールの策略通りだったのだろうか。

スターティング画像

4-1-4-1のアーセナルに対し、ユナイテッドは3-4-1-2の形を取った。ユナイテッドは守備時に2トップのファン・ペルシーとディ・マリアがサイドに開き、3-4-3の形に変化する。これでマンマークをハメ込み、フリーな選手を作らないのが狙いだ。

3-4-3画像

現代の主流であるゾーンディフェンスでは、守備陣の呼吸が乱れればスペースを作ってしまうが、マンマークではそうした状況を防止する事が出来る。どこまでいっても1対1の世界のため、自身のマーカーさえ見失わなければ守備として機能するのだ。

しかし、マンマークにもデメリットはある。そもそも現代でマンマークを使用するチームがほとんどいないのは、2つの大きな欠点があるからだ。1つは、走行距離。当然の事ながら、マンマークでは相手選手にどこまでも付いていくためスタミナ勝負になりやすい。無駄走りを少なくし、効率よく守備をする事が目的でゾーンディフェンスが生まれた訳であり、マンマークには無駄が多い。

もう1つは、1対1で必ず勝てる保証が無いと機能しない事だ。こちらの方が問題で、ゾーンディフェンスが生まれたのは1対1の状況を作られないためでもある。守備のセオリーでは1対1を作られる事はタブーであり、原則として常に2対1で対応するのが好ましい。しかしマンマークは1対1しか生まれない。つまり1対1で必ず勝てる確かな実力が求められるのだ。

マンツーマン画像

上の図のように、アーセナルのFWウェルベック対CBスモーリング、右サイドのチェンバレン対ブラケット、左のサンチェス対マクネア。スモーリングはともかく、ブラケットとマクネアは経験も浅い若手CBだ。とてもじゃないがチリ代表のエースであるサンチェスを止められるレベルではない。実際、この試合ではチェンバレンとサンチェスからチャンスメイクが数多くされており、実力差を感じずにはいられなかった。さらには中盤のウィルシャーやラムジーも、1対1で止められるほど甘い相手ではない。

結果として、ユナイテッドはアーセナルに攻め込まれる展開となった。GKのデ・ヘアが体を張って防いでくれたから良いものの、前半のうちに2失点は喫してもおかしくなかった。ファン・ハールも危険を感じたのか、試合終盤には左WBのアシュリー・ヤングを下げてMFダレン・フレッチャーを投入している。これで4バックに変更し、中盤の守備を厚くしようと考えたのだ。つまりマンマークをやめたのだ。

最後まで完結する事の出来なかったマンマーク戦術は、ギブスの足に当たるゴールなどの幸運を呼び込んでユナイテッドに勝ち点3をもたらした。4位浮上という結果にファン・ハールは満足していたようだが、この勝利がラッキーによる部分が大きかったと自覚する必要がある。

この戦い方が数年前のユナイテッドなら可能だったのかもしれない。しかし今は負傷者も多く、決してリーグ最高峰の選手層とは言い難い。1対1の場面で勝てないチームにマンマーク戦法を志向する権利は無い。ユナイテッドと同じく、ファン・ハール初のプレミア参戦も毎試合綱渡りのような展開だ。