ジーザズ=神の天敵である「D」のイニシャル。ダーヴィッツはその名の通りだがルイス・スアレスも何処かに「D」を隠しているはず。コミック&アニメの「ONE PEACE」ファンであれば確実に座布団一枚もらえるこの見出し。まずは全巻読破を薦める第四十の巻。
ダーヴィッツとファン・デルサール 夢の競演
「ローレウス・スポーツ・フォー・グッド・ファンデーション」ご存知だろうか。2000年に設立された同財団初の授賞式が5月25日モナコのモンテカルロで催された。故ネルソン・マンデラ氏は檀上にて「政治よりも人種の壁を壊すための強い力を備えているのがスポーツである。」と述べている。モントリオールとロス五輪400mハードルで金メダルを獲得したエドウィン・モーゼスがチェアマンを務め、貧困、ホームレス、戦争、暴力、薬物乱用、差別やエイズなどの社会的課題の克服を支援する国際スポーツ慈善活動団体。英国ロンドンのフルハムストリートにある本部とドイツ、イタリア、スペイン、スイス、オランダ欧州5ヵ国。米国オフィスはニューヨークのフィフスアベニューに。アルゼンチンと南アフリカを含む地球規模のネットワーク。
9月5日アルクマールのAFASスタディオンでは同財団オランダ主催のチャリティマッチが行われた。元オランイェを中心のローレウスオールスターズとレアルマドリーレジェンドが対戦。クラレンス・セードルフ、エドガー・ダーヴィッツ、ファン・デルサールと1995年エルンスト・ハッペルの英雄達がピッチに並んだ。
ダーヴィッツとセードルフといえばスリナム系チーム「スリプロフス」のチャリティマッチ、5月13日ヨングアヤックス戦に出場したばかり。アムステルダムアレナ近郊のバイルメルはスリナム人の居住地域。この日も多くのスリナムにルーツを持つギャラリーでスタンドが埋め尽くされた。スリプロフスの監督はアーロン・ヴィンターが務めているが今巻の主役は彼から別の人物に移る。
さてダーヴッツは指導者を目指して今夏トウェンテで研修に。かつて古巣アヤックスで研修を希望したが、ヨンクやベルカンプに拒否された切ない経験を持つ。
事の発端はそのダーヴィッツのトッテナム時代の師マルティン・ヨルがアヤックス監督に就任したことに始まる。
デンハーグ出身の強面オランダ人監督はプレミアやブンデスで指揮を取った戦術家。しかし2シーズン目となる2010年末、成績不振を理由に解任。翌年ウリ・コロネル会長、ファンデンボーフGMと総辞職。震源地はイエス・キリストと同じイニシャルを持つあの“ヨハン・クライフ”。
2011年クライフはアヤックスの理事に就任する。他には経営コンサルタントのスティーブ・テン・ハーブ、女性弁護士のマルヤン・オルフェルス、TVプロデユーサーポール・レーマー、そして現役に復帰する前のエドガー・ダーヴィッツが名を連ねた。理事を務めるには少々若いがゴーグル越しのプレーヤー目線も必要ということか。
後任GMの人選でクライフは他の理事と対立。会議の席上でダーヴィッツに対して「お前がここにいられるのは黒人だから」・・・オルフェルスに対して「あなたは女性だから」と暴言を吐いた。弁護士相手にこのセリフを吐けてしまうのはクライフしかいない。
ヨハン・クライフの虚像、実物は気さくな爺さん?
天賦の才は誰もが認めるヨハン・クライフ。しかし裕福な家庭で育ったボンボンではない。現役時代から口の悪さは知られるところ、労働者階級のアクセントで捲し立てる青年だったと聞く。クライフがダーヴィッツを非難し罵倒し侮辱し蔑んだのは無論褒められた行為ではない。但し人種差別だとか女性差別だとか騒ぎ立てるのは如何なものか。
この第二十四の巻の続編「スリナムは何処にある」の前・後編のテーマは黒(スリナム)人への人種差別問題である。その二つ前の巻で筆者はルイス・スアレスのニグロ発言を擁護した。そして今回4年前のクライフの発言をあらためて回想し今も差別を肯定する気はないが、過剰に差別だとクライフの言葉尻のみをクローズアップする報道と踊らされる違和感が想起された。
昨年12月バルセロナでのユースリーグ試合会場、地元記者について来賓席よりのシートに腰を下ろすと、一列後ろにクライフがやってきた。ヴィンター同様気さくに振る舞い握手にも応じてくれた。エキセントリックなイメージとは異なり拍子抜け。フットボールに関しては「天才」であり「狂人」のクライフもフットボールから離れれば、過去に事業での失敗も含め凡人以下、普通のお爺ちゃんなのだろう。アヤックスの監督時代見出されたアーロン・ヴィンターはクライフの前の席に。