欧州蹴球文化探訪 第二十四の巻 スリナムは何処にあるのか(前編)

シーズン1の第9話。スタジアムに怒号とブラジャーが飛び交い、よりによって練習場のゴールで首を吊るコーチ役のビクトール・ルフに笑いと涙。「VoetbalVrouwen」はお薦めできるオランダのTVドラマ。DVD化に期待。

オランダ女子とスリナム男子の恋愛映画

「Bolletjes Blues」は2006年に公開されたオランダ映画である。

 日本では未公開。移動中の機内で日本語字幕がなくても、斬新なヒップホップ調ミュージカルに仕上げた単純な恋愛ドラマなので意外に退屈しない。ヒロインのソフィ・ヴァン・オアス(1983年アムステルダム生)は画材商の娘役だが、アムステルダムの美術大学出身。

 スリナムからの黒人留学生との恋話は斬新な設定。

 翌07年のTVシリーズ「’VoetbalVrouwen」での好演で人気は急上昇。四人の主演女優とフットボールクラブに関わる男優陣の織りなすヒューマンコメディにはかつて高木 善朗がプレーしたスタジアムや練習場でのフットボールシーンが散見する。

 ソフィがロングからショートカットにイメージチェンジしているのでシーズン2の撮影当時のものだろう。華やかというか派手な顔立ちの女優陣の中で清楚な中央左がソフィ。

ライカールトとヴィンターの見極め方

 ギリシャで開催されたU-19欧州選手権。スペインの超新星がロシアにグループステージの借りを返しての戴冠。このグループが大混戦。露西に独蘭の4カ国が同居した為、三竦み三つ巴ならぬ四角いジャングルと化して、4試合の結果すべてのチームが1勝1敗で横並びに。
 最終節の結果ドイツーロシア、スペインーオランダは両試合とも引き分け。得失点差で首位ロシア、2位スペインが準決勝に駒を進めた。
 この紙一重の敗退には若きオレンジ軍団を率いたアーロン・ヴィンターの胸中は察して余り有る。

 ヴィンターは、80年代ヨハン・クライフに見出されアヤックスのトップチームに昇格。88年の欧州選手権優勝メンバーの一員だが後のACミラントリオの陰に隠れた存在。

 技巧に優れ運動量も豊富、いぶし銀の職人といった風情。アヤックスの先輩で共にスリナム系オランダ人のフランク・ライカールトと比較されるが、守備力統率力とダイナミックなスケールではライカールトに軍配が上がり、一方唸らせるようなスルーパス、トップ下からリベロまでを幅広くこなしたユーティリティがヴィンターの持ち味。

 現役時代同時にピッチに立たれると髪型も似ており見分けがつかなかったが、現在ならばこのスキンヘッドで一目瞭然。

 「ハイ、アーロン」と声をかけ差し出した手を握り返しこの笑顔。

 このコラムもアーロン表記で通そうかと考えたが、魚人海賊団を思い出してナミさんに泣かれたら困るのでヴィンターで通す。

 またライカールトはスリナム人の父親とオランダ人の母親の間に生まれた生粋のアムステルダムっ子だが、ヴィンターはスリナム共和国の首都バラボリマの出身。