セリエAには優勝トロフィーや皿がない。ユニフォームに盾型の国旗柄ワッペンが縫い付けられるだけ。しかしこれはこれで味がある。
もしも国旗の人気投票があればイタリアに札を入れる。トマトの赤、ズッキーニの緑は美食の国を象徴するカラー。
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ロッソネロがスクデットを最後に獲得したのは2010-11。高額の余剰戦力を整理し、新監督にサンプドリアで指揮を執ったマルコ・ジャンパオロを迎えて、意気揚々のシーズン開幕前。ところが順位は一向に上がらない。9月28日6節ミランはサンシーロでフィオレンティーナと対戦。名門対決はトスカーナの雄に軍配が上がる。
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3連敗でミランの順位は13位から16位にまで転落。経営陣が痺れを切らすのは何処よりも早い国。7節終了時更迭発表し後任には前フィオレンティーナ監督のステファノ・ピオリが指名された。週末はサッスオーロ相手に0-0のドローと泥沼から抜け出せずにいる。
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ジャンパオロは、この試合新加入のラデ・クルニッチを後半から投入したが、後半9分退場者を出してしまい奏功せず。ミランでのデビュー戦を勝利で飾れなかったクルニッチ。
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ジャンパオロとクルニッチの姿を高一の息子とプレス席から眺めたのは、2016年トスカーナの夏。
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134景はエンポリFCの本拠地、スタディオ・カルロ・カステラーニ。
この試合の主役は、敵将としてエンポリに帰ってきた前指揮官ジャンパオロ。クルニッチは残念ながら出番なく、試合前のウォームアップをぼんやり眺め、レンズを向けてもいない。今季ミランに移籍するまでの3シーズンを過ごし、エンポリ・サポーターに愛されていたボスニア・ヘルツェゴビナ人。
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マウリツィオ・サッリがナポリに去り、後任に就いて1年目にチームを10位に導いたのは2015-16。当時の選手の顔ぶれからすれば快挙。手腕を買われサンプドリアへ。こちらも3シーズン、中位をキープして名将の仲間入りかと思われたのだが、やはりビッグクラブの改革は荷が重かったか。突貫工事が得意なタイプではない。
過去に「長靴の国で観た異邦人たち 」の連載でルイス・ムリエル(五の巻)を主役にして、この試合についてふれている。