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欧州蹴球文化探訪 ベルギーの光と闇 第二十三話  青空の下に青いウェアの少年達

 人口六万人のゲンク。KRCゲンクの本拠地クリスタルアレナの収容人員は25000。車で訪れる地元ファンはともかく、相応の距離を駅からバスで移動するしかないロケーションは、筆者のような余所者を歓迎していない。
 このスタジアムが多くの日本国内サッカーファンの目に触れたのは、2013年月11月16日、日本代表とオランダ代表が(一応)中立国で対戦した親善試合の中継。

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 この試合観戦に訪れた日本人に、目と鼻の先にある竣工式典を数日後に控えた建物に気づいた方が果たしていただろうか。

 ファン・デル・ファールトが魅せたダイレクトでのサイドチェンジや、FWで出場したシーム・デ・ヨングのプレーを解説の松木氏が褒める。一方、現地ではかつての教え子達のプレーを観るため隣国から足を運んでいたのはセフ・フェルホーセン。同氏はゲンクの相談役も兼ねていた。

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 2002年の日韓ワールドカップ終了後、ベルギーに渡った鈴木隆行はレアルマドリー戦、残り僅か8分ながらピッチに投入された。この瞬間UEFAチャンピオンズリーグ本選出場を果たした日本人は旧名称時代の奥寺を含めると、稲本、小野に次いで史上4人目。ゲンクにとって記念すべき本選初出場となった2002-03シーズン、ベルギー三強にあと一歩の位置にまでクラブを発展させた功労者は、前(2001)年に取締役会長長に就任し経営手腕を振るった起業家ヨス・ファッセン。鈴木の移籍を絡めての日東電工からの投資増額もその一端に過ぎない。当時のゲンクには後にアヤックスへと移籍する絶対的エース、ウェズレイ・ソンクが在籍。移籍の経緯と置かれた環境に同情したのが懐かしい。その鈴木隆行も遂にスパイクを脱ぎ現役生活から足を洗う。

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 もうひとつの変革は監督の人選にある。80年代から国内の人材に偏っており例外はアンデルレヒトからユーゴスラビア人監督ペルゾビッチを迎え入れた93-94年のみ。
 それが2000年ヨハン・ボスカンプに続き2000-01シーズン途中からオランダ人のファルホーセンを起用。3シーズンぶりに国内制覇から翌シーズンは予選でチェコの強豪スパルタ・プラハを下して、前述のCL本選初出場に。

 日本では本田圭祐、吉田麻也の成長を促し指導者としての評価も高かったファルホーセン監督の進言や懐に入ったジャパンマネーにより、ベルギー三強よりも一足早い2003年下部組織のため寄宿舎が建設された。この注力した育成部門からは次々と個性的なタレントが巣立つ。

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 ファッセン会長は2006年に退任してからも取締役会の一員として陰ながらクラブを支えてきた。創立10周年を機に3.5ミリオンユーロの予算を投じてリニューアルする建物には、その功績を称え前会長の名前を冠することに。リエージュのドレフェイス・アカデミーを意識しているのは言うまでもない。

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 2013年11月待ちに待った施設の竣工式典。デ・ブルイネ、フォッセン、クルトワのOB三人も招かれ笑顔を見せる。
2400㎡の敷地に建築家フランク・ファントーレがデザインした白壁と青い屋根が鮮やかなコントラストを描く外観。屋内に目を向けるとロビーに置かれたソファもチームのシンボルカラーでコーディネート。オーディオルーム等研究室、医師や理学療法士とのミーディングルームが増設されているが、注目すべきは最新の器具が並ぶフィットネス&コンディショニングルーム。

 2011年10月にアンデルレヒトの育成施設ネールペデが完成しているが、リエージュやブリュッセルの施設と比べても何ら見劣りはしない。

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 現在の育成組織を年代別に紹介する。U-7所属14名が最年少。小学生の高学年層は厚みも増すが、中学生年代になるとU-13所属16名、U-14所属15名、U-15所属17名と人数も絞られている。リエージュ出身のセバスチャン・ポコニョーリ。中学年代までは地元リエージュに在籍したがゲンクに移り16歳でトップデビュー。オランダazアルクマールを経てスタンダールでプレーをしている。その後ブンデス(ハノーヴァー)も経験し現在プレミア(ウエストブロムビッチ)に。その高校生年代U-16所属19名、U-17所属15名。
 今季スティーブン・ドフールがアンデルレヒトへ加入の際、かつて所属した宿敵リエージュのサポーターから「裏切り者」と罵られたが、ベルギーU-16代表時代はメケレン、U-17代表からトップデビューしたのもゲンクの青いユニフォーム姿だったので、如何なものかと。

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 そして高校を卒業した18歳と19歳で構成されるU-19は今季32名。今秋ウェズレイ・ソンクも臨時のストライカーコーチとしてU13からU17の指導に携わっている。

 ファン感謝デーには一般見学も実施しており、この施設を訪問した日本人は筆者以外にも存在する。FIFAワールドカップ・ブラジル大会終了後、サウサンプトンのベルギーキャンプにも貸し出したのがこの施設。当然吉田麻也も参加していた。