欧州蹴球文化探訪 第十八の巻 闘いの場に立つための資格と品格

 若者の略し言葉についていけない50歳。ブダペストは「ドナウの真珠」の愛称で知られるハンガリーの都。略して「ブダの真珠」・・・とは言わない。この巻はブダはともかくデブをキーボードで連打しており、気分を悪くされた方には深謝。

デブレツェニVSCを推薦する。

 東京五輪とほぼ時を同じくして開催されるユーロ2020本大会は、欧州全土13都市にて開催する多国分散型へと変革を遂げる。32か国の立候補国の中にアルメニア(エレバン)の名前を見つけその勇気には拍手を贈るがアゼルバイジャン(バクー)が選ばれたのには、さすがプラティニと感嘆する。

 ここはアゼルバイジャンの記事を書きたいところではあるが、なにぶん国土に足を踏み入れたことがないのでスルー。

 ハンガリーは筆者お薦めの国。「ドナウの真珠」首都ブダペスト郊外のセンテンドレで眺める川の流れには暫し時間を忘れてしまう。ブダペストでは2018年完成を目指して新国立競技場プロジェクトが進んでおり、このコラムで既にポーランド、スロバキア、オーストリアの三か国を原発推進国と反対国に色分けして取り上げたいるので、この巻では南の隣接国ハンガリーを注視する。
 ブダペストから200キロ離れているため、ルーマニアとの国境の方が近い、もうひとつ第二の都市デブレツェンは東部の街だ。2009-10チャンピオンズリーグの本選グループステージ出場を決めたデブレツェ二鉄道・スポーツクラブ(DVSC) は国内優勝回数6回の強豪。
 しかしホームスタジアムはUEFAの開催条件の規定に満たない。苦肉の策としてブダペストの国立競技場で、リヴァプール、フィオレンティーナ、そしてオリンピック・リヨンを迎え撃つ運びに。不世出の名選手プシュカーシュ・フェレンツの名を冠し5万人を収容する総合陸上競技場は、1950年代に建設された為前述の新国立競技場建設に伴い間もなく取り壊されるだろう。

見納めが近いと思うとスタジアムに行きたくなる

 ハンガリーだけでなく世界の歴史にその名を残すスタジアムを観ておこうとスケジュールを調整したのが、2012-13年リーグカップ、フェレンツバロシュとDVTKによる準決勝。写真は案内していただいたプレスシート。
「何処に座れば良いですか?」
と下手な英語で聞くと、
「真ん中の列全部空いてるよ。何処でもどうぞ 。」
と言われて苦笑いを返すしかない。
ハンガリーでリーグカップ戦が創設されたのは2007年と比較的最近。ウィナーにヨーロッパリーグ出場資格も無くメディアの注目度も低い。
 2009-10シーズン、5月にマジャル・カップを制覇、デブレツェニは既に手にしていたリーグカップとネムゼティ・バイノクシャーグ(1部)も併せて史上初の三冠を達成。
 その後も安定した成績を収め、今季のヨーロッパリーグ予選にもエントリーしている。
 7月16日2回戦はラトビアの首都リガに乗り込んだスコントFCとの1stレグ。
 71分に投入された背番号91の黒人ストライカーは僅か1分後にゴールを決めドローに持ち込み救世主に。彼の名はジョフレイ・カスティリオン。この日UEFAコンペティションに初めて刻まれたその名は、筆者の琴線に触れ、2010-11シーズン、20歳でアヤックスのトップチームにデビューした当時の記憶を呼び覚ました。ルーマニアから移籍したオランダ人は、昨日の2ndレグも、デブレツェ二サポーターからの惜しみない声援に後押しされ、56分ピッチに登場すると、怒涛のゴールラッシュを締め括る9点目のゴールを奪った。
 チームのストロングポイントは、ハンガリー代表経験者が揃うディフェンシブハーフ。主将のペーテル・サカーイ28歳は本来攻撃的なポジションの選手。ヨージェフ・ヴァルガ27歳は、昨年のユーロ予選右サイドバックの位置で出場している。ラースロー・ジダイもキャップ数こそ伸びていないがコンスタントに招集されている。写真は2013年のシーズン最終戦。
僅かにヨーロッパリーグ出場の可能性を残すMTKブダペストとデブレツェ二とのゲームでシャッターを切った。MTKを中盤の底で支えたジダイ、青い襷の白ユニフォーム姿もこの試合が見納めとなった。