ぷら~り欧州蹴球場百景【27】ディーン・コート / ボーンマス

撮影の二週間前、成美さんに昼食のリクエストを尋ねたところ、肉食系女子が集まっていたらしく「美味しいお肉が食べたいです」と返信。そこで予約したお肉は黒毛和牛。

ビールとフィッシュ&チップスがあれば充分の自分が言っても説得力に欠けるが、料理の不味い国なる悪評は一昔前。そしてローストビーフだけは本場でしか味わえない伝統料理なので旅行の際には是非召し上がれ。

フットボールの母国、首都ロンドンには驚くべき数のクラブチームが存在する。
数日間の滞在で出来る限り多くの試合を観戦するならば、ロンドンに留まるべき。されどロンドン以外の都市にも足を伸ばしてみたくなり、近場のスタジアムを調べてみた。吉田の所属するサウサンプトンも良いが、もう少し南に下れば、田園風景の美しいドーセット州の中でも最大の集落ボーンマスがある。


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気候は年間を通して穏やかでビクトリア様式の建築物が街並みを彩る。観光地だけあって街の経済は金融サービスとレジャー産業に委ねられる。年金所得者が老後の生活を謳歌する姿を目にする一方、大学生、特に留学生が多く中心部は若者の活気で溢れる。世界遺産に登録される12キロの海岸線は年間500万人が訪れるビーチリゾート。この街で暮らす異邦人が、多国籍の飲食店を開業しており、中華やインドなどアジア系から中東系、新鮮な魚貝類を活かしたイタリア料理店も。


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AFCボーンマスは、1997年から財政難に苦しみ2008年400万ポンドの負債を抱え一度は破産したクラブ。現監督のエディ・ハウも街頭で富裕層のリゾート客に募金を呼びかけている。四部からの再スタート。2011年にロシア人実業家 マキシム・デミンの出資を契機に、再建されたクラブは2014-15シーズンのチャンピオンシップ(2部)を制し創設125年目、初のプレミアリーグ昇格を果たす。

第二十七景はアソシエイション・フットボール・クラブ・ボーンマスの本拠地ディーン・コート。


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赤煉瓦を積み重ねたボーンマスの駅舎。向かいにコーチステーションの2階には24時間営業のスーパーマーケットASDA。マクドナルドがあるので安易に朝食をすませる。スタジアムのあるキングスパークまでは徒歩で充分な距離。収容人員12000人弱とあって毎試合満員のスタジアム、スタンドを撮影していても胸が躍るこの日のストーク戦は1-1のドロー。


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2017-18シーズン、ボーンマスは歴史的金星を挙げる。1月14日第23節、アーセン・ヴェンゲル監督が本来率いているはずが、前々節よりペナルティで不在のアーセナル。アレクシス・サンチェス、メスト・エジルと飛車角抜きでカップ戦からの疲労も色濃い。休養充分のボーンマスイレブンはホームで躍動。2-1で勝利。

自信にあふれるチェリーズ(ボーンマスの愛称)は31日、第25節スタンフォード・ブリッジに乗り込み、前年覇者に0-3で完勝。アントニオ・コンテを窮地に追い込む。エディ・ハウが仕込んだポゼッションサッカーでチャンピオンシップ優勝、プレミア昇格を決めた2014-15年シーズン。


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プレミアを制したのは、ジョゼ・モウリーニョのチェルシー。年間売上32万ポンドのチェルシーに対しボーンマスは5,1万ポンド。貧富の差を英国メディアが大きく取り上げていた。上の写真ベンチシートから立ち上がり戦況を見つめるハウ監督。そのシートにはBMWのロゴ。


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一年前の試合は、日曜の午後(昼)開催。プレス控室のホスピタリティメニューは・・・肉!
日曜日にサンデーローストを食べるのは英国の習慣。ただロンドンならいざ知らず、この小さなスタジアムでお肉が振舞われるとは、さすがプレミア。ユニフォームの胸ロゴと電光ボードにも
Mansion.com。2003年にジブラルタルで個人投資家が設立したオンライン・カジノのカンパニーは2006年トッテナムのスポンサーに加わり話題に。2015年プレミア昇格を機にボーンマス、現在はクリスタルパレスのシャツでもロゴを目にする。

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