ぷら~り 欧州蹴球場百景【92】スタディオ・アルテミオ・フランキ / フィレンツェ

美しい田園風景と美食のトスカーナと聞かれて誰でも思い浮かぶのは州都フィレンツェ。しかし近郊には見どころも多く古都シエナは1995年に「歴史地区」が世界遺産にも登録されている。中心部に聳えるのは、ロマネスク建築の大聖堂(ドゥオーモ)。遠目から逆光の写真でも大理石の横縞模様が確認できる。

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シエナから北西に40キロ、フィレンツェから南西に57キロの距離にあるサンジミニャーノも美しい塔が立ち並ぶ。この街のほうが一足早く(1990年)世界遺産に。塔の上から眺める素晴らしいパノラマ風景は感動的。名前の由来は侵攻から町を守り通した司教·聖ジミニャーノ。

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特色豊かな郷土料理でもてなしてくれるイタリア。トスカーナはやはり「肉」。霜降り肉を有難がるのは日本人だけ。柔らかくジューシーな赤身を炭火で表面だけ焼いてオリーブオイルと塩でシンプルな味付け。真っ赤なレアがフィレンツェ流。

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メインの前にはサラミとプロシュート=生ハム。プロシュートは種類が豊富で好みも千差万別。サン·ジミニャーノの ヴィアーニ社は 1922 年の職人的工房から始まり、現在ではトスカーノを代表する食品メーカー。1996年にEUよりDOPとしての認定を受けた同社の製品は絶品。トスカーナ産サラミなら現地でお馴染みの野菜フィノッキオの種で風味付けされたフィノッキオーナがお薦め。

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第92景はフィオレンティーナの本拠地アルテミオ·フランキ。最後に訪問したのは二年半前。


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当時ヴィオラを指揮したのはパウロ·ソウザ。現在はリカルド・ゴメスの後任としてボルドーに。やはり端正な風貌には中国天津よりもワインの本場が良く似合う。


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紫のユニといえば、バティストゥータ、ルカ·トニと大型ストライカーの豪快なゴールが思い出され、この日最前線に190㎝を越える背番号30に注目した。

クマ·ババカル 1993年生まれ。

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14歳でセネガルから渡伊、フィオレンティーナの育成部門から一年でトップチームに合流。当時は若き日のイタリア代表マリオ·バロテッリとも比較されていた。

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2010年コッパ·イタリアでのデビュー戦で彼の初ゴールをアシストしたのが上写真のはマヌエル・パスクアルだった。出場機会を与えるべく複数のクラブに貸し出された後、2014年からヴィオラのエースに君臨。セネガル代表にも召集される。

現在はサッスオーロでプレーするが、2012年スペインでの四カ月を除くとこれまでキャリアの大半をイタリアで過ごしており、妙なところで瞠目する。

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第88景では、マルセイユで活躍するバロテッリのレキップ紙面を掲載した。ガーナ人の両親の間に生まれたバロテッリは、北アフリカ出身の黒人に対する差別が厳しいイタリアを離れて正解。
2016年2月、ラツィオ·サポーターの標的にされたのはカリドウ・クリバリ。試合中断の悪夢が再び。昨年12月インテル·サポーターの愚行に対してホーム2試合の無観客処分+1試合ゴール裏閉鎖とアウェー戦1試合の遠征が禁じられた。

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インテルーナポリ戦から二週間前、ニューヨーク・ソーホー地区にあるイタリアを代表するブランド『プラダ』の店舗。陳列した猿のキャラクター製品が黒人に対する侮辱行為=ブラックフェイスを表現していると指摘され、販売中止に。同社はSNSで謝罪している。

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ミラノ市民の名誉のために付け加えるが、今年3月同市では反人種差別を訴えるべく約20万人がデモ行進に参加している。
また2月謹慎が解けたインテルのウルトラスは人種差別コールを否定。処分を受け入れたクラブ側にも不満と怒りを露わにした。ちなみにインテルにはセネガル代表ケイタ・バルデ・ディアオが所属している。

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そんなミラノ近郊で先月20日、51人の生徒を乗せたバスジャック·放火事件が勃発した。47歳セネガル出身の犯人は、アフリカから欧州を目指す移民が地中海で死亡する事態に怒り犯行に及んだとの現地報道。欧州を目指して地中海を渡るアフリカ人移民の玄関口となるのがイタリア。

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昨年6月発足したコンテ伊政権は、アフリカからの救助船の上陸を拒否。これに対してスペインのサンチェス新政権が受け入れを表明。フランスのマクロン大統領は無責任とイタリアを批判すればコンテ首相は偽善的とやり返し移民政策を巡る EU 内の分裂が露呈された。EU政策の足並みなど乱れて至極当然、ユーロやチャンピオンズリーグでスタンドの熱気と興奮も常軌を逸する。

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セネガルのダカール港からフェリーに10分乗れば世界遺産のゴレ島に着く。かつて奴隷貿易の拠点として西アフリカから多くの黒人が新大陸へ売られていった暗黒の歴史、その哀しさがトスカーナの風景よりも遥かに美しいと感じさせるのか。(世界遺産登録は1978年。)

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セネガルは米を主食とするが、多くの途上国が穀物を主食とする状況で、霜降り肉のため、大量に輸入した雑穀を牛の飼料として用いるとは怪しからんと批判されたのが日本。

外国人労働者の受け入れを拡大する改正出入国管理法は今月施行されるが、この国にサメが群れを成す海域を越えてボートが辿り着くことはない。【九十二景了】

文/撮影:横澤悦孝 モデル:Mayu