ぷら~り 欧州蹴球場百景【89】フレンズ・アレーナ / ソルナ

今月5日、ブダペストのバーでTV観戦したUEFAチャンピオンズリーグ(CL)。
後半タディッチのゴールの瞬間に絶叫したので、地元のハンガリー人や観光客が振り返った。「日本人はアジャックスが好きなのか?」
なるほど・・・アヤックスと発音するのはオランダ人と日本人だけなのか。

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アヤックスにとっては16年ぶりのベスト8進出。前回グループステージを突破したのは、2005-06シーズン。この時はインテルに8強への道を断たれた。

Sports Graphic Number 誌 647号。表紙のリオネル·メッシの写真が新鮮だった。見開き頁をめくると西部謙司氏による決勝トーナメント1回戦徹底分析。国別の勢力図を今季と比べると意外なほど変わらない。スペイン3、ポルトガル1とイベリア勢はそのまま。イタリアとオランダがひとつ減り、そのぶんドイツとフランスが増えている。大穴グラスゴー·レンジャースが勝ち上がっていたので、英国の枠で一括りにすれば4と変わらず。

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その後アヤックスは4シーズン指揮官が定まらずCL本選の舞台から消える。復活したのは2010-11シーズン。そこから5季連続で出場はするもののグループステージの壁に立ち往生、ヨーロッパリーグ(EL)出場権=3位狙いがお決まりのパターンとなった。


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2014-15シーズンは、初戦のPSG戦をホームでドロー。カバーニに先制ゴールを許すも、壁の端でぴょんと跳ねている背番号20ラッセ·シェーネが同点ゴールを決めてドローに持ち込む。これは「もしかすると」と夢みたものの、アウェーのAPOEL戦はドロー、バルサ、PSGに3連敗と厳しい現実に目が覚める。


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未勝利のまま1ポイント差でELを賭けることとなった最終節。翌日のAD紙にはAjax wint eindelijk en gaat nu verder in Europa League=『アヤックスが遂に勝利を収め今季もヨーロッパリーグに(ベスト32)に進出』の文字が並んだ。

2015-16シーズンはCL予選3回戦でラピド·ウィーンに敗れ、早々にELへとまわるのだが、グループステージはホームのアレナで白星なしのお粗末さん。アヤクシートの腸が煮え繰り返ったのは無理もない。

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第89景はストックホルム近郊、ソルナにあるフレンズアレーナ。2017年5月24日ELファイナル会場に対峙したのはマンチェスター·ユナイテッドとアヤックス·アムステルダムのサポーター。中立の地元フットボールファンも含めその数46,961人。

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このスタジアムを本拠地として使用するのはスウェーデン一部リーグ=アルスヴェンスカンの強豪AIKソルナ。Jリーグと同じく春秋制を採用するこの国の名前をUEFAカントリーランキングで探すと、20位まで視線を下げても見当たらない。所詮セミプロリーグと侮るなかれ15試合で35万5000人を動員している。27節は3万1千人。ホーム最終戦となる11月4日の29節は5万人を超える観客が9年ぶりの優勝を祝った。

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ストックホルムで飲んだ銘柄は大手のスペンドルプス醸造所のマリエスタード。同じくスペンドルプスのFatöl スペシャル。以前飲んだノルウェーのビールは「Hansa Fatøl」とラベルに記されていたが、FatölもFatølもドラフトビールを意味する。

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アルコールの度数により分類され酒税も異なるのがスウェーデン。しっかり2.8と缶に表示されていても、安さにつられて軽いものを購入してしまう。すると物足りなくて、北のヴェネツィアと称される水の都に滞在中、飲んでいたのは隣国デンマークのカールスバーグだった。


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ELは昨季アトレティコ·マドリーが6年ぶり三度目の戴冠。紙面は2016年のレキップ(フランス)。前日三連覇のを成し遂げたセビージャの偉業を報じているがこの試合はパリでTV観戦だったか。

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2009年に前身のUEFAカップからマイナーチェンジ。過去9大会のファイナリスト18クラブは、スペイン7に英プレミアと並んでポルトガルが4と三か国で独占。残りがドニプロ(ウクライナ)、アヤックス(オランダ)、そして昨季のOM(マルセイユ)でようやく仏のクラブが登場したが、独伊勢は未だ現れない。

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2017年5月5日ロンドン滞在時、準決勝初戦アウェーでマンチェスターユナイテッドがセルタに1-0の先勝を伝える紙面。前々日のTV画面ではアヤックスが4-1とリヨンを粉砕する様を眺めご満悦。準決勝ではクラ―ス・ヤン・フンテラールのシャルケを延長戦の末下した勢いは止まらない。

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結局フレンズ·アリーナでは2-0の敗戦。ダレイ·ブリントが古巣の完封に貢献、試合後には後輩ダフィ·クラーセンとユニフォームを交換していた。

今季の快進撃、才能豊かな若者達を支えているのがラッセン·シェーネ。2002年ヘーレンフーェンのユースから17年間オランダで(アヤックスで6年)プレーしている。アンカーから前のポジションならば何処でも高いレベルでこなせるオールラウンドな能力が強み。
1995年のチームにはフランク·ライカールトが、2002年のチームにはヤリ·リトマネンがいた。ブリントでもフンテラールでもなく現在の精神的支柱が32歳のデンマーク代表であることは間違いない。

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バルサにはルイス·スアレス、トッテナムのヤン・フェルトンゲン、そして、ダレイ·ブリントとハキム・ツィエク。 アヤックスでエールディビジMVPを受賞した四人がCL8強に顔を揃えた今季。しかし華やかなステージには縁がなくとも『ミスター·アヤックス』『ミスター·エールディビジ』の称号はシューネにこそ相応しい。

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その右足がスター軍団ユベントスを相手に再び奇跡を起こしたならば、祝杯の麦酒はカールスバーグしかない。【八十九景了】

文/撮影:横澤悦孝 モデル:Mayu