ぷら~り 欧州蹴球場百景【84】ユゼフ・ピウスツキ・スタジアム / クラクフ

ビールを飲みながら初老の男性が日本人かと嬉しそうに声をかけてきた。一瞬危ないヒトかと思ったが、自分のほうが余程危ない風貌であることに気づいて頷く。国内初代王者に輝いたのはこのクラブ=KSクラコヴィアだと知ってるか?と聞かれたので「もちろんだ」と適当に答える。


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真冬のスタジアムでロール状のホットドッグをつまみにビールを飲みながら、爺さんの声に耳を傾ける。生まれる前の話をまるで見てきたように爺さんは饒舌だが、片言の英語からポーランド語に変わり、内容をまったく理解できない。

第84景はポーランド第二の都市クラクフにあるユゼフ・ピウスツキ・スタジアム。


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ポーランド共和国の初代国家元首の名を冠するスタジアムだけあって収容人員15000人と規模こそ大きくないが近代的で不足はない。老朽化したスタジアムが一新されたのはユーロ2012=ポーランド·ウクライナ共催のため。

ワルシャワ国際空港がショパンの名を冠しているが、日本国内でも知られているポーランド人ならばショパンの次に名前が挙がるのはピウスツキか、バイエルン·ミュンヘンのストライカーあたりだろう。政治家と軍人両面の顔を持つ彼は独裁者であっても、多民族共存の理念を掲げ絶大な支持を受け国民を導いた。

親日家としても知られ1904年7月、日露戦争真っ最中での訪日。独立への支援を要請すると、後に日本人将校51名に勲章を授与した。


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本年は日本とポーランドの外交樹立100周年の節目となる。100年前ロシア支配下のポーランドからシベリアに抑留されていた孤児達は飢餓と伝染病で絶命の危機に瀕していた。欧米諸国が匙を投げた北寒の地で、武士道の精神から救いの手を差し伸べた史実は、現在の「欧州一の親日国」を築く根幹となる。

日本の伝統文化に憧れ、礼節を重んじる日本人に対して敬意を示すお国柄では、現在も武道が盛ん。
昨夏東京と神戸で開催された世界学生空手選手権の女子組手61キロ級に参加したDorota Banaszczyk選手(1997年1月生まれ)は、その美貌も加わり現地では紙面で大きく取り上げられている。日本での屈辱をバネにして11月マドリッドで開催された第24回WKF世界空手選手権55キロ級では見事金メダルを獲得。右端がきれてしまっているが、青いグローブで拳を覆った彼女の雄姿は、決勝戦でのショット。


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もちろんフットボールの記事も紙面を大きく割いている。トップリーグは『エクストラクラサ』。前日のピアスト·クリヴィツェとザグウェンビェ・ソスノヴィエツの試合結果を報じている。第39景にも登場したピアストは22節終了時点で5位と今シーズンはここまで健闘している。2月9日ピウスツキ·スタジアム、そのピアスト相手に逆転し勝鬨を上げたKSクラコヴィアは、8位といつも通りの中位をキープしている。ところが今季ライバルのヴィスワ·クラクフが不調で9位。財政面の悪化がそのまま結果に表れた形。両クラブの差は僅か1ポイントでこのまま3月16日のダービーを迎えるとクラクフの街に血の雨が降るか。大袈裟ではなくライバル同士の対抗意識は凄まじい。


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「スタジアムで飲みたい欧州ビール王決定戦」・・・隠れたこのビール大国からどの銘柄を推すべきか。ポーランド航空の機内で飲んだジヴィエツやスタジアムで販売されていたティスキエは定番中の定番。ショパン空港ではワルシャワのクルレフスキエ(写真左端)、中央はポーランド南東部ブジェスコで醸造されるオコチム。右端のカシュテランは、カールズバーグ·ポーランドのラガー。


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