オーストリアサッカーの聖地、エルンスト・ハッペルシュタディオン。
2013年12月13日。アウストリア・ウィーンはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)本選での記念すべき初勝利を収めた。
クロアチア人監督ネナド・ビエリツァの功績は語り継がれるだろう。
先制しながらゼニトサポーターの暴挙により一時中断。ペースを乱されまさかの4失点。味方に足を引っ張られての寂寞たる結末をルチアーノ・スパレッティ監督は受け入れるしかなかった。それでも同組のFCポルトが既に首位突破を決め消化試合のアトレティコ・マドリーに敗れたおかげで辛うじて決勝トーナメントへ。
ポルトサポーターにしてみれば三節、ゼニト戦をドローに持ち込めれば、もしくは5節のアウストリア戦で勝ち点3を奪えればとホームで精彩を欠いた二試合が悔やまれる。
中央駅そばのバールでビールを頼み、荷物を預かってほしいと頭を下げると、気の良い店主はカウンターの奥の扉を開けてくれた。常連客達も笑顔で声をかけてくる。
街並を眺めながら15分程歩くとアルベルト・ピッコに。現在も人口10万人に満たない街のクラブが創立110年を迎えたことを教えてくれるエンブレム。
収容人員は1万人強。しかし1919年に建設されて以降刻まれたであろう数々の歴史には現役時代=8年間の半分を過ごした若き日のスパレッティの姿も含まれている。(当時はセリエC)
9月17日FCプロ・ヴェルチェリを迎えての第4節。開幕前カップ戦でウディーゼを破り注目される中、三試合連続のドロー。待望の初勝利にスペツィアの街が歓喜に満ち溢れた。この試合残り6分2点リードの状況でドメニコ・ディ・カルロ監督は元U21代表ニコ・ダトコヴィッチをピッチに送り出した。昨年11月、クロアチア人から指揮官がイタリア人に代わり、クロアチア国籍は今やダトコヴィッチのみ。
2015年3月3日の同一カードでの凄まじいゴールショー。38分追加点を奪われたホームチームは2分後にダトコヴィッチのゴールで息を吹き返すと僅か一分後にマリオ・シトゥムが決め一気に同点。後半怒涛の3ゴールで5-2のスコア。ビエリツァ監督も同胞の3ゴールに満足したはず。この試合スタメン4名+途中出場1名とクロアチア人プレーヤーが目立つ。かつて松原良香、財前宣之が在籍した名門リエカの会長も兼ねるミシェコビッチ氏の就任以来、スポーツディレクター、そして監督までクロアチア人一色に染まり異彩を放っていたのは昨季まで。
ローマのスタディオ・オリンピコ8月25日のCL・プレーオフ第二戦。二人退場者を出したローマを退け、アウェーで狂喜乱舞するポルトサポーター。彼らにしてみれば三年越しとなるスパレッティへのリベンジ成就となった。
ヨーロッパリーグ・グループデージへと戦場を移したスパレッティのローマは10月20日第三節、アウストリア・ウィーンとの対戦を控えている。
一方のビエリツァは、リグリア海からポーランドへ。ロシアから母国に戻ったスパレッティとは真逆の方向に進路を取った。
昨年10月22日ヨーロッパリーグ(EL)・グループステージ三節、スタディオ・アルテミオ・フランキでフィオレンティーナを1-2で下したレフ・ポズナンを今季から任されたビエリツァ。国内を制し再び脚光の場を目指す彼を両脇からアウストリア、スペツィア時代と変わらずオーストリア人のレネ・ポムス、マルティン・メイヤーが支える。
スパレッティとビエリツァ。二人が再び顔をあわせる運命が何時の日にか訪れるのかもしれない。