Foot ball Drunker 〔119〕visiting 『Estádio do Bessa XXI』ポルト/ ポルトガル


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注目すべきは、ベッサに隣接したグラウンド。グラウンドでボールを追う少年達を、時間の許す限り保護者達と一緒に眺めたのがボアヴィスタのアカデミー。トップチームの成績では、同じ都市のライバル、FCポルトに大きく水をあけられてはいるものの、育成の水準は高くこれまで多くの逸材を輩出してきた。

日本のメディアでもフェルナンデスの名前が取り上げられたのは2016年のリオ五輪。ポルトガルU23代表の背番号10番は8月4日。アルゼンチンに2-0と快勝、両得点をアシストして勝利に貢献している。当時の所属は〝青田刈りの達人〟ウッディネーゼ。
8月13日ベスト8でドイツと対戦、4-0の完敗ブラジルから帰国して間もなく向かった先はイタリア北西部の港町。

サンプドリアが彼に用意した背番号は10。合流して翌週にはセリエA開幕戦を迎える。五輪出場で合流が遅れた新参者に出場の機会がないのは仕方がない。


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翌週二節はアタランタ戦。 スタディオ·ルイジ·フェッラーリの結果をガゼッタ紙で確認する。連勝好発進にサンプドリアの名物オーナー、マッシモ·フェレーロ:Massimo Ferrero【1951年8月5日生】も大喜び。アンデルレヒトから電撃移籍のデニス·プラート:Dennis Praet【1994年5月14日生】はスタメンで採点も6と、まあまあの評価。フェルナンデスは終了間際 ご挨拶程度の6分間出場で評価なしを意味するSV。ところが3節から3連敗2引き分けと不振に喘ぐブルチェルキアーティ。

9節のデルビーでチャンス到来。スタメンで好パフォーマンス、六試合ぶりの白星を手繰り寄せ、11節インテル戦からはレギュラーに定着、結局シーズンを通して攻撃のタクトを振るった。


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15年程時計の針を戻してタイムスリップするとFCインフェスタのアカデミーに別れを告げ、ボアヴィスタの門扉を叩く10歳のブルーノ少年がいる。それから八年の間研鑽を重ね技術を磨いてきた。

猫から黒豹へ 変貌を遂げる未来

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ポルトガルでワインをオーダーすると、まず北(ポルト)か南(リスボン)かと聞かれるが悩む必要はない。正直どちらを選んでもはずれのないコストパフォーマンス。
これまで多くの若者がスポルティングを巣立ち、欧州各国のトップリーグへと羽ばたいて行った。南の育成の名門に負けず劣らず、北からも優秀な人材が後を絶たない。
ガタオという名前はポルトガル語で”大きな猫”を意味する。ヴェルデには、若い、熟していないという意味がある。経験が乏しいくせに口だけは一人前の若僧を日本語ならば青二才。ポルトガルならば緑二才となるのか。


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獅子、竜、鷹がポルトガルの押しも押されぬ三強。ボアヴィスタFCのファンやサポーターは、自らをPantera Negras:パンテラ・ネグラスと呼ぶ。
ベッサ通りからプリメイロ·デ·ジャネイロ通りを右折すると、白黒千鳥格子の柱によじ登る黒豹のモニュメントが目に入る。
その傍らで駆け回る小さなパンテラ·ヴェルデ達の中から第二、第三のブルーノが巣立つ未来を楽しみに今宵もボトルを空けるとする。[第119話了]