第三巻のテーマは「空」。初めてUEFA王者を観たのは1987年のトヨタカップに来日したFCポルト。四半世紀も前の回想巻。スマホもスカイプもない20代を過ごした世代は、国際遠距離恋愛の状況で海外の想いを寄せる相手の顔・姿形を思い描くキャンバスが空だった。この空は彼(彼女)の住む空に続いているのだからと・・・書いていて切なく、客観的にはキモイが誰にも若かりし時代はある。
写真 Porto 2010
初めて無意識に口ずさんだのはロサンゼルスの路線バスに乗っている時だったと記憶する。
「生まれた所や皮膚や目の色でいったいこの僕の何がわかるというのだろう 運転手さんそのバスに僕も乗っけてくれないか・・・」
長距離バス移動、人種差別、そして日本ではお目にかかることのない抜けるような青空。この三拍子が揃うと自然に口ずさんでしまうブルーハーツ[1988年作詞/真島昌利]の名曲。欧州探訪の原点となるトヨタカップ初観戦の1987年はブルーハーツのメジャーデビューと重なる。
日本で長距離バスと言うと眉をひそめる方も多いが、列車のように乗車客の出入りが少ないのでスリや窃盗にあい難く、荷物の積み込みが楽で超過料金が発生しない。バスは機材など大荷物を抱えての一人旅ではファーストチョイスの移動手段である。
5月30日俳優の今井雅之さんが大腸癌で他界されたニュースをウィーン滞在時ネット上で見つけた。告別式で「青空」が流れたのは本人の要望だったらしい。今井さんは1961年生まれ、筆者より三歳年長者に哀悼の意を捧げる。
「神様にワイロを贈り 天国へのパスポートをねだるなんて本気なのか? ・・・隠しているその手を見せてみろよ♪」(了)