第十八の巻、舞台はハンガリー。掲載写真のMTKブダペストとデブレツェニVSCの試合は一昨年の最終節。昨年もこのスタジアムに足が向いた。一昔前、日本でいえば昭和のようなノスタルジアを感じる観戦も悪くはない。
11月12・15日ユーロ本選出場を賭けた大一番は、ハンガリー代表にエールを贈った。プレーオフ初戦はラースロー・クラインハイスラー21歳のゴールで勝利。そしてブダペストでの第2戦。14分プリスキンが強烈なシュートを突き刺した瞬間、悲願達成は確信へと変わった。
ハンガリー代表のフォーメーションは4-1-4-1。アウェーながら中盤の底プレーメーカーのレフティ、エレクを一枚にして、前五人全て攻撃的な選手を配置する強気の采配。しかし20本を越えるシュートを浴びながら無失点での勝利。これだからフットボールは面白い。
栄光をつかみ歴史に名を刻んだメンバー紹介。
ゴールキーパーは最年長、100キャップを記録したガーボル・キラーイ39歳。97年のヘルタ・ベルリン移籍以降18年間英独両国のクラブを渡り歩き、今シーズン古巣ソンバトヘィに帰還した。このクラブで間もなくキャリアの終焉を迎える彼にとって最後の大舞台。センターバックはポーランドの強豪ヴィスワ・クラクフのリハールド・グズミチとビデオトンの新鋭アダム・ラング。FCシオン(スイス)のヴィルモシュ・ヴァンツァーク32歳がベンチに控える。
右サイドバック、フィオーラ(プスカシュ)とカダル(ポズナニ)。ポズナニといえば10月22日のヨーロッパリーグ第三節グループI。フィオレンティーナをアルテミオフランキで破った衝撃は記憶に新しい。カダルと右ウイングのロブレンチッチのA代表2名に加え、元U-21代表のオフェンシブハーフ、ダヴィド・ホルマン22歳がフェロンツバレシュからレンタルされており、現在三人のハンガリー人が所属している。ロブレンチッチは76分からの出場したが第2戦はスタメン。
左サイドは、MTKブダペストとデブレツェニVSCの観戦時(第四十の巻参照)で見かけた大黒柱ジュジャーク・バラージュ。右は勝利の立役者ラースロー・クラインハイスラー。ハンブルガーSVのゾルタン・シュティエベルは控えに。
ゾルタン・ゲラ36歳も大ベテラン。1979年生まれ日本の小野伸二や稲本潤一と同世代。04~12年までの8シーズンをウエストプロムビッチ、フルハムと稲本がかつて所属していた英国クラブでプレーをしていた。
そしてクリスティアーノ・ネーメト。MTKブダペストのユース時代からその才能は異彩を放ち将来を嘱望された点取り屋。16歳にしてトップデビュー。二年後の2007年リヴァプールへの移籍で一躍名を馳せた。現在はアメリカMLSのカンザスシティ所属、年齢も26歳とキャリアのピークを迎える。MLSカッププレーオフ10月29日東地区1回戦ポートランドとアウェーでの対戦。同月3日、同カードに途中出場したネーメトが83分決勝ゴールを決めカンザスは勝利している。この日も延長6分ネーメトのゴールで一度は勝ち越したがPK戦で無念の敗退を喫した。
ワントップは193cmのアダム・サライが初戦。第2戦は、プリスキン。サライは昨シーズンシャルケからホッフェンハイムに移籍。 かつてシュツットガルトユースに所属、09年マインツでトップデビューと主戦場はドイツ。控えのニコリッチもレギア・ワルシャワ所属とポーランドでプレーする選手が目立つか。
ハンガリー国内組ではフェロンツバロシュ期待の20歳アダム・ナギが第2戦スタメン。本大会までには国外への移籍が予想される。
あらためて顔ぶれを見ても日本では無名。地味な面子と言われればそれまで。それでも亡き友の遺志を受け継いだ結束力を最大の武器に86年のワールドカップ以来30年ぶりのメジャー大会に挑む。