森保ジャパンの新たな船出 ブラジルを目指す候補者達の現況

ぷら~り欧州蹴球場百景【82】ジグナル・イドゥナ・パルク / ドルトムント

アジア杯が終了。日本代表の視線は既に6月に開催されるコパ・アメリカへと向いている。国際サッカー連盟(FIFA)の規定では、クラブに対して大陸別の大会にA代表選手を派遣する義務が生じるのは一年に一度。つまりこの規定を知りながら、再びアジアカップに参加した選手の招集を乞うのは些か虫がよすぎる。アジア杯出場組からブラジルのピッチに立てるのは半数に満たないと考えるのが妥当だろう。

同時期Jリーグは開催中、そうなるとアジア杯未招集の欧州組を主力に据えるのが吉。ディフェンスは西野ジャパンの昌子源(トゥールーズ)、植田直通(セークル・ブルージュ)にマンチェスター・シティ経由でオランダに渡った板倉滉。近々対戦するであろう中山雄太(PECズヴォレ)と人材は豊富。

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そして攻撃の核となるのは、トルコで衝撃デビューを飾った香川真司しかいない。第82景は彼が2010年から主戦場として慣れ親しんだジグナル・イドゥナ・パルク。実際日本から多くの香川ファンがこのスタジアムを訪れている。

名勝負名場面は数多くあれど、ボルシア・ドルトムントの試合で一番記憶に残るのは、こちらの写真。ドイツ語が並ぶオーストリアで発行された紙面。

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2012-13シーズン決勝の舞台はロンドンにある聖地ニューウェンブリー。この試合はウィーン中央駅の店内でテレビ観戦した。マンチェスターユナイテッドへの移籍がなければ、日本人初のUEFAチャンピオンズリーグ・ファイナリストが誕生していただろうにと、試合展開の記憶は朧気乍ら、口惜しさだけは未だ燻る。

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同国対決で苦汁を舐めたユルゲン・クロップは昨季リヴァプールを率いて、ジョゼップ・グアルディオラのマンチェスター・シティとの同国対決を制した。翌日の紙面はハンガリー(マジャール)語だが、ビールのコースターはチェコを代表する銘柄スタロプラメン。ブダペストからプラハに移動してシャッターをきったようだが1年前に何時何処にいたのかは思い出せない。

準決勝の相手はバルサを下したASローマ。モハメド・サラーの古巣とあって彼の情報がクロップの戦略の鍵になるようなことがビルト紙面片隅に。

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独断と偏見で凝り固まった「スタジアムで飲みたい欧州ビール王決定戦」も間もなくベスト16が出揃う中、相当迷った末にミュンヘンのパウラナー、ニーダーザクセン州のイェヴァーを選出。惜しくも落選としたのが王冠のラベル。初めて飲んだのは路線こそ忘れたがルフトハンザ機内に間違いない。


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ヴァルシュタイナーは、ノルドライン・ヴェストフォーレン州のビール。爽やかで飲みやすいピルスナーの代表格。カバーガールは次回から小瓶を手にしたMAYUさんに引き継がれる。

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2月4日 シント・トロイデン対オイペン。鎌田大地と豊川雄太の日本人対決は共にゴールを記録。そのベルギーからドイツに貸し出された久保裕也(ニュルンベルク)はベンチを温める時間が長く、2月5日のDFBポカール、ハンブルガーSVでも出番なし。むしろ二部ながら、この日ピッチに送り出された伊藤達哉やザンクトパウリで復調した宮市亮に注目したい。ちなみにこの試合、酒井高徳もフル出場で勝利に貢献。
二部といえば、ホルスタインキールの奥川雅也も2月3日はスタメンで81分出場。レギュラー確保に一歩近づいた。ハリルジャパンで脚光を浴びた井手口陽介(グロイター・フュルト)は右膝後十字靭帯断裂からリハビリも順調。手薄なポジションだけに可能性は充分。

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ブンデスリーガ第19節ドルトムント対ハノーヴァー96。負傷が癒えた浅野琢磨は途中出場。2月1日、ライプツィヒ戦はスタメン、原口元気が戻っても今後出番は増えそうな気配。

シャルルロワに森岡亮太が貸し出されたのは個人的な朗報。来月3日には伊東純也との日本人対決を撮影する予定。負傷に泣かされた関根貴大もシント・トロイデンで再起を目指す。

昨年12月18日ブンデスリーガ第16節。首位ドルトムントがフォルタナ・デュッセルドルフに敗れる番狂わせ。2点目のゴールをアシストした宇佐美貴史を忘れてはいけない。


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シーズン後半は彼らにとって代表復帰アピールの場。好調な選手がブラジルへの切符を手するのだろうが、南米とスタイルの近いポルトガルからは安西海斗や深堀隼平、小久保玲央など将来を見据えてのサプライズ招集もあり得る。

今回のアジア杯は森保ジャパンにとってあくまで通過点。それはコパ・アメリカにも当てはまる。最終ゴールは2022年カタールの地。カタール戦前半の選手任せの采配や試合後のインタビューから森保監督からは勝敗への執着が然程感じられなかった。

そのカタールの代表チームは新・大陸王者に相応しいモダンで洗練されたチームだった。彼らを褒めるなら兎も角、日本代表が批判される謂れなど無い。

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かつてメッシのいないバルサと呼ばれたスペイン代表のアジア版、シャビのいないアル・サッドが今回のカタール代表。3年前『欧州蹴球文化探訪 ベルギーの光と闇 第二十話 開かれた門扉 』にその名を記したアクラム・アフィフ(1996年11月生まれ)。
当時はストライカーのイメージだったが、現在はサイドが本職になっており日本戦でも1G2Aと活躍した。ビジャ・レアルでプレーしていた彼を母国に呼び戻すなど、欧州から若手を自国リーグに戻して代表を強化したカタール。権田修一のポルティモネンセ移籍によりスタメンすべて欧州組の日本代表が寄せ集めにしか見えない完全勝利。コパ・アメリカに今回のベストメンバーで臨むのは明らかで非常に興味深い。


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カタールからイスタンブールまで3500キロ程度。実際に搭乗したローマ行きの便で5400キロ。カタールの強化政策は経済力と地理的なアドバンテージに支えられている。
(ちなみに日本からシンガポールまでが5300キロ。)


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欧州でプレーするビッグネームがいないカタールを侮っていた節のある日本のファンやメディア。確かにロシア大会で成功を収めた国の大半がチャンピオンズリーガーで固められていた。
日本を代表するチャンピオンズリーガー香川真司の豊富な経験が代表にもたらす効用は計り知れない。そして欧州でプレーする日本人が世界最高峰の舞台に立つまで成長し、その数においてブラジルやアルゼンチンと肩を並べる日が来るのをただ只管待つ。

カタールのように施策の独自性を打ち出せない日本に選択肢はない。【八十二景了】

文/撮影:横澤悦孝 モデル:久留実《 Culumi / Mayu 》